筆者について
現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です
- 正規雇用の美術館学芸員
- 公立美術館・私立美術館双方を経験
- 西洋近代美術で修士号を取得
- 大学では美術とは関係のない学部に在籍
- 留学経験(英語圏)あり
本サイトでは、学芸員を目指していた頃の自分が知りたかったこと等を紹介しています
本記事では、博物館・美術館学芸員になるにはどうすれば良いのかについて、詳しく解説しています。
今現在中高校生の方、大学や大学院で学生をされている方、既卒の社会人の方まで、あらゆる方を想定しています。
筆者は美術館勤めですが、博物館やその他施設に共通する点も多々ありますので、参考になれば幸いです!
後半では、学芸員に関する「よくある疑問」もまとめています
【はじめに】「学芸員になる=正解」ではありません
本サイトは、学芸員になることが正解!という趣旨のものではありません
家族との関係や経済的な問題もありますし、働き方はとても個人的なもの。
ましては就職が難しい職業となると、そもそも「目指すこと」のハードルが高いと思います。
ですので、
- 学芸員を目指している方
- 学芸員になろうか悩んでいる方
- 学芸員以外の選択肢も考えたい方
と、様々な方に向けた記事を書いています。
私自身も「学芸員目指していて良いのだろうか」「もうやめよう」と考えた時期があります。
迷ったり、つまずいたりするのは当然のこと!
気軽に他記事も覗いていただけると嬉しいです。
学芸員の仕事内容
さて、学芸員に対して以下のような疑問を感じていませんか?
- 学芸員ってどんなことをする人?
- 具体的な仕事内容は?
- 1日の業務は?
- 博物館学芸員資格って?
分からないことがたくさん!
色々な疑問に答えるのでご安心ください!
具体的な仕事内容や給与、1日の過ごし方、魅力や大変なところ等は以下よりどうぞ。
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学芸員になるまでの基本的な流れ
さて、博物館学芸員になるための方法は決して1本道ではありません。
基本の流れ(例)は、以下のような感じです
- 大学在学中に博物館学芸員資格を取得する(学士号も取得する)
- 大学院に進学し、研究室で研究実績を積む
- 1年生や2年生など時期は関係なく、とにかく学芸員募集に応募する
本記事前半では、上記の主流に沿って学生の方向けに解説します。
中盤からは、1度一般企業に勤めてから学芸員を目指す既卒社会人の方向けに解説していきます。
終盤には、「よくある疑問」を取り上げています。
博物館学芸員資格について
博物館学芸員資格の取得方法は以下の3通りです。
- 学士の学位を取得(大学・短大を卒業)、かつ文部科学省令の定める博物館に関する科目の単位を修得する。
- 大学・短大に2年以上在学し、博物館に関する科目の単位を含めた62単位以上を修得したうえで、3年以上学芸員補として働く。 » 学芸員補についてはこちらの記事で解説しています。
- 文部科学大臣が文部科学省令で定めるところにより、上記2点と同等以上の学力及び経験を有すると認めたもの(学芸員資格認定を合格したもの)。
多くの人が①の方法、つまり大学に通いながら資格取得のための単位を取る方法を選択します。
(3は、「学芸員資格認定試験」に合格する方法です。認定試験には筆記試験と実務経験・業績の審査の2パターンがあります。詳細条件は文化庁HPにて確認してください。)
学芸員になるには【大学選びのポイント】
1番大切なのは「大学でどう過ごすか」ですが、大学選びにもポイントがあります。
学芸員になりたい方は、意識しておいて損はありません。
具体的には、以下のような点を心に留めておくと◎
それぞれの項目については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
細かい注意点も記載しているので気になる方は読んでみてください。
学芸員になるには【大学での過ごし方】
語学について
読み書きは当然、+話せることを目指す
個人的には語学はきっちりやっておいた方がいいと思っています。
私自身が学芸員として採用された理由のひとつに語学があり(後で館長から聞いた話)、他の受験者との差別化になったからです。
筆者の各テストスコアはTOEIC925点、TOEFL iBT105点(いずれも学部生時代、留学前のスコア)です。こちらの記事では、私が高校生の頃に実践していた英語学習ルーティーンやツールをまとめています。
実際に学芸員として就職した後も、英語力の必要性を感じています。
語学と言っても、読み書きではありません。
西洋美術史の学芸員志望の方なら読み書きは不自由なくできると思いますが、きちんと話せるでしょうか?
英語を話せるようになれば、学芸員のキャリアに役立ちます
地方の公立美術館でも、海外のキュレーターとやりとりする機会は意外に多いです。
学芸員になる上での語学の重要性については、よくある質問「英語あるいは第二外国語が必須?どれくらい大切?」も合わせてご覧ください。
ボランティア・インターン・アルバイト
小さいことでも積み重ねる
時間がある学部の頃にできるだけ様々な体験をしていきましょう。
※院生になってからも美術館系のアルバイトができるといいですが、大学院の研究室によっては教授の補佐の仕事がかなり多いので無理をせず。
学芸員採用のことを考えると、1番理想なのは学芸員補のアルバイトです。
しかし、ほとんどの場合は既に美術館で経験を積んでいないと難しいのが現実
学部生の時点では、都内の有名博物館・美術館でのインターンやアルバイトはかなりハードルが高いと言えます。
経験を積ませてもらえるボランティア募集や比較的小規模の美術館でのアルバイトを積み上げましょう。
▼ 美術館・博物館バイトが多い
また、求人サイトだけではなく、定期的に個別のホームページやSNSを確認する習慣が大切です。
@rinhwan_blog でも求人情報を流しています
美術館に限らずとも、美術に関係することに積極的に参加していきましょう。
私は画廊でボランティア、美術系の出版社で有償インターンをしていました。
その他にも色々やっていたので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
▼ 学芸員になるまでの経験談
博物館学芸員資格の取得
博物館学芸員資格を取得できる環境にある人は、必ず学部在学中に取得してしまいましょう
短期集中型や通信もありますから後になるともう取れないというわけではありませんが、どんどん忙しくなっていくので早めに!
ご自身の学部で取得コースがなくても、同大学の他学部、あるいは他大学でも申請すれば受講できる場合がありますから、調べてみてくださいね。
▼ 博物館学芸員資格を取得できる通信制大学をまとめています。
学芸員になるには【大学院への準備】
卒論・研究計画書について
学芸員になるには、基本的に修士以上の学位が必須です。
大学院入学のために、入試(筆記+面接)を受験することになります。
その際に提出を求められるのが、
- 卒業論文
- 研究計画書
※大学院でどのような研究がしたいのか
これらは、面接試験のための材料にもされます
学部から美術史を専攻していた方は、すでに卒論準備などで研究していることや興味のあることをそのまま大学院でも研究する人が多いでしょう。
さらに同じ研究室のまま院進する場合には、卒論も研究計画書もその先生に見てもらえるので、特に問題はないはずです。
ちょっと不安なのは、美術史と関係ない学部にいる場合です。
なお研究計画書については、志望研究室によってある程度フォーマットが決まっていたりもします。
研究室を訪問して、院生の先輩に話を聞くのも良いでしょう。
緊張するかもしれませんが、本来気軽に訪問しても良い場所です。
大学院入試に備えて
大学院入試特化の記事は【執筆予定】です。
需要がありそうなら書く予定...
以下の記事では、美術の学習に役立つ書籍・映画・データベースをまとめているので、試験準備にお役立てください。
▼ 自主学習用まとめ
学芸員になるには【大学院での過ごし方】
論文や学会、研究会に参加する
研究分野によって難易度は変わりますが、論文や学会、学内の研究会などにも積極的に挑戦しましょう!
査読論文が難しければ、査読なしでも学内の学術誌など参加できるものに取り組むのも良いと思います。
学芸員採用の時に研究実績として何か書けるものがあると心強いです
アルバイトについて
大学院在学中に、学芸員補(学芸員のお手伝い)のアルバイトができると理想的です。
また、公募の学芸員補募集はかなり競争率が高いため、学生が学芸員補のアルバイトをするには教授の紹介を介すのが一般的。
美術館との繋がりで、教授に紹介してもらえたらベスト
学芸員と大学教授は、長い付き合いがある場合も多いです。
私立美術館は、信頼できる教授の研究室から代々アルバイトをとっていることが多いです。
公立館は職員個人の裁量が(採用に関しては)制限されますし、そもそも予算の関係でアルバイトではなく、あってもインターンがほとんどかと。
したがって、担当教授がどれだけアルバイトに積極的か、美術館と繋がりを持っているかは重要なポイントです。
かといって、美術館と繋がりはありますか?!なんて教授に直接は聞けない...
ひとつの見分け方は、教授自身が主催する研究会のパネラーや参加者などに現役の美術館関係者がいるかどうか。
いる場合、定期的にお付き合いがある可能性も高く、院生でもその関係者と話す機会を得ることができます。
人手不足の場合、美術館側はまず優先的に研究室へ声をかけてくださることも多いです。
また、美術館学芸員の中には大学で授業を受け持っている人もいます。
その場合には、受講生に直接展示の手伝いをお願いすることもあります
▼ 学芸員補についてさらに詳しく知りたい方はこちら
▼ 並行して受付スタッフなどのバイトをするのも◎
美術界隈の旬な話題を追う
最新の美術ニュースを追う、というのは最強の学芸員採用試験対策!
私の主な情報源は、アルバイト先の美術館に常に郵送されてくる新美術新聞やリリース、学芸員さんたちの会話でした。
そういう場に身を置いていると自然と情報が入ってきます
大学院の研究室では、自分たちの研究の話が中心!
ニュースについてはあまり話題に上がっていなかったので、アルバイト先には助けられました。
研究資料を検索したり、ウェブ上で閲覧できる便利なデータベースを以下の記事に集めました。
普段から目を通しておくと安心です!
特に、Art Annual Onlineの【最新ニュース】欄はオススメ
例えば「美術の今—その行方— 我々はコロナ禍から何を得るのか」。
このような記事に目を通しつつ自分の意見を積み上げていくことが、小論文記述対策で必要なことです。
1つのトピックを読むにあたって、「自分だったらこう思う」を普段から意識するようにしましょう。
解答用紙をめくった時に、その話題に対する立場決めに時間を割かずに済みます。
学芸員採用試験について
採用試験も美術館によって多種多様ですが、特に公立美術館の採用試験についてはある程度傾向を掴むことは可能です。
具体的な過去問や対策、基本的な問題形式については以下の記事で解説しているので、興味がある方は読んでみてください。
採用試験の過去問は基本的に、各地方自治体のホームページから入手することが可能です
当時の私の場合もそうでしたし、現在もいくつか調べてみると、いずれも都道府県市町村のホームページなどに掲載されていました。
受験を決めた段階で受験先の問題を確認し、傾向を掴んでおきましょう。
1次試験である筆記試験は、【前半】公務員試験と【後半】美術専門知識の試験に分かれています。
公立美術館を受験する学芸員志望の方の心理的ハードルになるのが、公務員試験かもしれません。
公務員試験の勉強もしなきゃいけないの...?
と思われるかもしれません。
結論から言うと、学芸員採用の場合、美術専門知識の試験が圧倒的に比重が重いことが多いので、そんなに心配しなくて大丈夫です。
公立美術館に受かった周りの人たちも公務員試験はボロボロだったようです。
なので、公務員試験に対してあまり気負いする必要はないと思います
少なくとも、公務員試験の本を買って勉強して...なんて考えなくてOKです。
美術専門知識の試験の内容は、美術史用語の解説と、最新の美術関連のニュースに対する論述でした。
以下の記事では過去問も載せながら解説していますので、気になる方は読んでみてください。
学芸員になるには【社会人が直面する問題】
社会人の方が「美術館(博物館)学芸員で食べていく」ことを目指す場合に向き合うであろう問題について考えてみます。
こんなことが知りたい、などありましたら「お問い合わせ」から教えてくださると嬉しいです。個人として分かる範囲でお答えしたいと思います。
博物館学芸員資格を取得していない
既卒だけど学芸員資格を保持していないという方は、当然ですがまず取得。
既に学士をお持ちなら、働きながら学芸員資格を取得する方法もあります。
詳しくは以下の記事で解説、具体的な大学も紹介していますので参考になれば幸いです。
修士号(以上)を取得していない
結論から言うと、大学院に行かずして学芸員就職することはかなり困難です。
そもそも募集条件が「院卒以上」のことが多いですし、「学部卒」が条件であっても応募者の大半は修士以上なので実質「修士以上」はほぼ必須条件と言えます。
現在のお仕事が学芸員就職で有利になる職種の場合、学芸員補等に応募して数年経験を積み正規雇用職員にチャレンジするパターンもありだと思います。
学芸員に必要な能力や適性、仕事内容については以下の記事で紹介しているので、ご自分の職種で売れるようなポイントを是非探してみてくだ
現在のお仕事が学芸員と遠い場合には、大学院進学を強くオススメいたします
» 美術史を学べる大学院一覧
「大学院進学」肩書き以外の利点
単なる肩書き以外にも、大学院生になることで
- 研究の実績を積むことが容易である
- 非公開のアルバイト情報が入る
- 学芸員経験者の教授と繋がることができる
などのメリットがあります。
研究の実績とは、学会やシンポジウム、その他あらゆる発表会、研究論文などを指します
教授によっては比較的規模の小さい研究会を自主的に開催している人もおり、大学院生(とくに修士)にとっては貴重な発表の場です。
全国規模の大きな学会で発表できなくても、このような小さな機会に恵まれています。
また、後述する「実務経験」につながるアルバイトやインターンの情報元は教授であることが多いんですよ。
▼ 心配される方も多いであろう「学芸員とコネ」については以下の記事で詳しく書いています。
学部卒で学芸員をしているのはこんな人
私が就労経験を経たいくつかの美術館でも、学部卒の学芸員はほぼいませんでした。
でも、ゼロではないです。
ただし、わざわざ学部卒を雇う場合にはそれ相応の理由が必要です。院卒でなく採用される人は、何らかの形で既に他館で豊富な実務経験を経ている人が多いです。
私立美術館の運営財団側で働いていた人が美術館に配属になったり、館長直々に外部からヘッドハンティングした場合などですね。
いずれの場合も、自分の意思で、というよりは流れで学芸員に行き着いた人が多い印象があります。
知識面・専門性に自信がない
美術系の教育機関で学んだことがない...と不安を持たれている方も多いかもしれません。
純粋に知識量に関してだけ言えば、美術史をどこかで勉強したとかしてないとか、あまり関係ないです。
私も美術と関係のない学部にいましたので、そのことを気に病む必要はないと思います。
▼ 自主学習用にどうぞ
学会発表や論文などの研究実績がない
学芸員を目指す上で障害になりやすいのは、研究成果が記録として残っていないという点です。
学芸員募集の書類審査では、「研究実績」の提出を求められる場合が多々あります。私立ならなおさらです。
1度や2度の記述試験のみで知識量を図るのには限界がありますからね。
ただし修士のレベルであれば、研究実績がないことは学芸員就職を阻むほどではないと思います。そこまで神経質に考える必要はありません。
※西洋美術史の場合です。
他の美術史系も大体同じ雰囲気だとは思いますが、研究対象により学会の数自体が変動する関係で「学会発表の難易度」自体が異なります。自身の研究分野において全国学会や査読付き論文が、どれほど「当たり前のもの」として捉えられているか確認してください。
学芸員としての実務経験がない
常に人手不足の美術館/博物館。
即戦力!になる人は重宝されます。
なので、どこか美術館やら博物館やらで就労経験はあった方が良いです。
「実務経験」=正規雇用ではありません
学芸員補や派遣、アルバイト、インターン、ボランティアまで含みます。
美術系の実務経験がゼロのまま学芸員募集を探してもなかなか厳しいのが現実だと思うので、まずは非正規雇用として経験を積みながら正規雇用枠を狙うのが良いと思い
\検索結果一覧/
ただし給与面では厳しい!(正規でも苦しい!)ので経済的な制約はあります。
学芸員の経済面については以下の記事で紹介しています。
私は学部・修士の頃に美術館(学芸員補)や画廊(アルバイト)、美術系出版社(インターン)などを経験しました。
▼ こちらで詳しくお話ししているので、興味がある方はどうぞ!
学芸員に関する【よくある疑問】
自分自身が当時疑問に思っていたことに加えて、検索結果や知恵袋、SNSなどを参考によくありそうな疑問を集めてみました。
他にも疑問がありましたら、お問合せよりお聞かせください。
学芸員になるのはやっぱり難しいの?
A. 10年前20年前と比べれば就職しやすいです
たぶん、知恵袋などでこの質問をしている人はこう思っているはず。
- 「無理!諦めろ!」と一蹴してもらって、諦める理由が欲しい
- 「大丈夫!いける!頑張れ!」と背中を押して欲しい
どちらも痛いほど分かります。
でも残念ながら(?)どっちとも言い切れません。
現在は一昔前と比べ正規職員としての学芸員募集も増えてきているのは事実です。
ここ数年は「学芸員就職のチャンス」と言われています。
管理職クラスの人たちの世代交代が起きていて、学芸員たちが繰り上がっているからです。
某学芸員募集掲示板を見ても、私の感覚では募集が多いと感じました
「就職しやすい」とは言っても、今までと比べて。
競争が激しいことには変わりなく、現役の学芸員や博士課程の先輩と同じ席を狙うことになります。
学芸員になるのはなかなか難しい、というのは未だにあまり変わりありません。
▼ 難しい難しいとばかり言われるけど、本当はどうなのか。改めて考えてみました。
▼ ちなみに、学芸員以外にも美術館に関わる仕事は色々あります。興味がある方は是非に読んでみてください。
学芸員に向いている性格は?必要な能力は?
社交的かつ気配り上手であり、フットワークが軽い人は学芸員に向いていると言えます
学芸員で一番必要な性格・資質であると言えるでしょう。
また、コミュニケーション能力やマルチタスク能力に加えて、高度な専門知識・文章力・語学力などの学力面での能力も求められます。
一方で、自分の専門以外に学問的情熱を向けられない人や、大勢の人の前で話すことに苦痛を感じる人は、学芸員に向いていないかもしれません。
大学院に行かないと学芸員にはなれない?
A. はい、学芸員を目指すなら大学院は必須だと思います
既卒の社会人の方、あるいは大学院受験か就活かの選択に迫られている大学生が気になる疑問ですね。
博士まで行く必要はありませんが、修士課程は絶対だと思います。
修士号がないまま、社会人で資格のみとって学芸員を目指すというのは相当茨の道。大学生も院進は必須です。
とはいえ経験上、学部卒の学芸員はゼロではないです
私立美術館の運営財団側で働いていた人が美術館に配属になったり、館長直々に外部からヘッドハンティングした場合などです。
いずれの場合も、自分の意思で、というよりは流れで学芸員に行き着いた人が多い印象です。
学芸員は英語・第二外国語が必須?
A. 英語が話せればかなり強みになります。「読む・書く」は必須、「話す」能力も重要性を増していく!
前提として、博物館・美術館の種類によって必要度は異なります。
日本美術専門でも有名作品であれば海外に貸し出す機会は多いですから、大規模な有名館こそスピーキング能力の重要性は高まります。
西洋美術専門の方なら、英語の読み書きはかなりできるかと思います。
でも、現場では英語が話せる人が足りていません。
英語が話せるとなると、採用試験の際に確実に強みになります。
筆者の各テストスコアはTOEIC925点、TOEFL iBT105点(いずれも学部生時代、留学前のスコア)です。こちらの記事では、私が高校生の頃に実践していた英語学習ルーティーンやツールをまとめています。無料でできることが多いので是非。
私自身は、面接の際に第二外国語については聞かれませんでした。
もちろん採用先の美術館によるので一概には言えませんが、中途半端に二外に手を出すなら、英語を極めた方がいいと思います。
学芸員になるにはコネが必要?
A. あるに越したことはないですが、コネがなくても学芸員にはなれます。
筆者の就職先は公立美術館ですし、直接斡旋してもらったわけではありません。(試験を受けることは誰にも言っていなかったので、教授も知りませんでした)
とはいえ、私自身が100%誰の助けも受けていないとは思っていません。間接的なご縁は色々あったと思います
とくに院生時代は、教授の紹介で学芸員補としてアルバイトをしていたので、採用試験の際に「実務経験」として職歴欄に書くことができました。
これが就職の際に役立ったと考えれば、完全にコネがないとは言えないかもしれません。
公立か私立かでコネの重要度は変わる
あなたが私立美術館希望でしたら、当然コネの重要度は自然と上がるでしょう。
とはいえ、本当に学芸員になりたいのであれば、日本全国どこの美術館でも、公立でも私立でも、できる限り応募してください。
▼ コネに直結する大学院選びについてはこちらで詳しく解説しているので、気になる方は是非チェックしてみてください。
学芸員って、食べていけるの?
学芸員の給与についてインタビューを受けました(2023年9月2日)
» 学芸員「初任給21万6100円」安すぎる?金沢21美で議論も...現役から「高い方」の声、なぜ給与水準が低いのか
A. 私は一応食べていけてますが、十分とは言えません
筆者は正規雇用の公務員を経験し、その後私立美術館へ移りましたが、学芸員の中でも給与面は恵まれている部類です。
当然ですが、給与は雇用形態(正規・非正規)と就職先(公立・私立・指定管理者制度を導入しているかなど)によってまちまち。
詳細は上記の記事で書いていますが、ここではおおまかな傾向をお話しします。
公務員としての正規雇用となれば(公立美術館の学芸員募集)、一般的な公務員のお給料をもらえますから給与も普通です。
普通の公務員と同じと思ってもらっていいです。待遇も整っていますし、比較的恵まれています。
一方で私立美術館の場合、給与はピンキリです。
そもそも中途の採用が多い印象があり、新卒採用だと難易度が高い傾向があります。
公立美術館勤めなら公務員の給与・待遇と基本同じ。私立美術館勤めはピンからキリまで
また、博物館・美術館はどこも人件費削減のために期限付き非正規雇用での募集が多いのが現状
そして非正規の職員として数年経験を積みながら、正規の学芸員を目指すと言う方はかなりの数います。
いわずもがな、非正規雇用の給与はかなり厳しいです。
博物館学芸員資格はあまり役に立たない?
学芸員資格は、学芸員にならない人は持っていても仕方ないと言われます。
当たり前ですが、他の就活などで強いアピールになるような資格ではありません
なので、大学生で学芸員資格の授業を受けるか迷っている方は結構いるようですね。
個人的には「学芸員になろうか迷っている人はとっておいた方が良い」と思います。
理由は①取得自体は簡単 だけど②後になって研究と並行して取るのは大変だから です
私は学部生時代に一般企業就活し内定をもらった経験があるので、その時の所感を踏まえて「学芸員資格は他の就活にも役に立つのか?」を考えてみました。
学芸員を目指す人と、一般企業就活する人、それぞれにとってのメリットを紹介しているので、興味がある方は以下の記事をご覧ください。
学芸員の魅力は?大変なところは?
学芸員の魅力はなんといっても、情熱を注げることを仕事にできる、ということでしょう。
イチから展覧会を作り上げていく達成感とやりがいは、他では得られない喜びがあります。
また、来館者アンケートで展示を褒められたり、展示室で「すごく良かった!」と声をかけてもらえると、仕事の励みにもなります。
作品の良さが伝わる瞬間が、やっぱり1番嬉しい
また、ある程度は仕事の中で調べ物をしたりもできるので、常に新しいことを吸収して勉強していきたい方には楽しいと思いますよ。
じゃあ、大変なところは?
雑芸員という揶揄は有名な話ですが、実際かなりのマルチタスク。常にたくさんの仕事を同時並行的に進めていく必要がある点は大変です
あとは、休日や家での時間返上で仕事をすることになる覚悟を。
休日に出勤したり、帰宅後に家で仕事の準備をするのはあるある。
展覧会の準備が間に合わなければ、日付が変わるまで展示室に残るなんてことも。
▼ 学芸員の魅力と大変なところをまとめました。
このまま学芸員を目指して良いか不安...
私もそうでした
これは疑問というか気持ちというか、もうどうしたらいいんですかっていう感じだと思うんですけど。。
私も実はそんなふうに考えていたので、以下の記事で共有させていただきました。(迷いがない人は読まなくてOK)
他の道を選ぶということもまた賢い選択だと思います。
私も「迷って甘えるな!」みたいなことを言われたことありますけど、人間迷って当然じゃない?と思いませんか。
そもそも、迷ったり絶望したり、そういう人間臭い感性がある人の方が学芸員に向いてますよ
学芸員になるには【ポイントまとめ】
いかがでしたか?
大学や大学院で学生をされている方、既卒の社会人の方に向けて色々と詰め込みました。
学芸員を目指す方は、以下の点を気に留めておくと良いかもです。
当サイトでは他にも学芸員や美術にまつわるあれこれを書いていますので、興味がある方は読んでみてくださいね。
おまけ|学芸員以外のお仕事を探している方へ
ここまでお読みいただいて「やっぱりもう難しいかも...」と思った方もいるかもしれません。
学芸員になることが正解というわけではありませんし、世の中には他にも美術館に関わる素晴らしい職業が色々あります。
美術館と関わりながらお仕事したいという方は、以下の記事も読んでみてくださいね