筆者について
こんにちは!現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です
- 正規雇用の美術館学芸員
- 公立美術館・私立美術館双方を経験
- 一般求人で応募、採用
本サイトでは、学芸員を目指していた頃の自分が知りたかったこと等を紹介しています
本記事では、統計だけに頼らない「学芸員の給料の実際」を紹介しています。
学芸員の給与についてインタビューを受けました(2023年9月2日)
» 学芸員「初任給21万6100円」安すぎる?金沢21美で議論も...現役から「高い方」の声、なぜ給与水準が低いのか
学芸員の給料の現状
学芸員は専門職だが平均年収は低い傾向
博物館(美術館)学芸員になるには、国家資格や(実質)修士号以上の学位が必要です。
また「好きを仕事にしたい」という人が多いため、非正規雇用であっても就職の競争率が高い傾向にあります。
就職が難しいなら、学芸員はそこそこ稼げるのでは?
20代だと学芸員の平均月収は16万円〜21万円、平均年収は250~300万円程度です
全体を見ると300万円に届くのはほんの一握りだと思います。学芸員として働く新卒のおおよその最高額といえば、かなり有名な私立美術館で月収23〜24万円程度です。
公立館ならある程度残業管理はしっかりしてますから、+少々の残業代くらいはつきます。
とはいえ(特に書類上で)残業しないでねの雰囲気はありますし...
先輩が残業をつけていないとどうしてもつけにくいのは学芸員の世界も同じ。
どこの館も学芸員は慢性的に人手不足。残業は多いですが、残業代はあまり期待できません
国立館や有名私立館の管理職クラスとなればそれなりにもらえるものの、実際の平?学芸員はなかなか浮かばれない
学芸員は非正規雇用が圧倒的に多い
「学芸員の給料は低い」と言われている背景には、任期付きの非正規雇用が圧倒的に多いという問題が隠れています。
人件費削減のために非正規雇用の学芸員は増えていて、もちろん収入は正規雇用よりも低く設定されています。
昇給やボーナスなどにも大きな差があります。
しかも表向きの雇用形態が異なるだけで、実質の仕事量は正規雇用の学芸員とあまり変わらなかったりするのが実情です。
慢性的に人手不足なので、仕事ができる非正規さんには負担がかかってしまいます
非正規であっても学芸員の職につきたい人はかなりいるので、雇用されている側も離職せず職場もそれに甘えてしまっている現状があります。
【実例】各美術館学芸員の給料
2023年1月時点掲載の学芸員採用枠に記載があったものをいくつか抜粋しました。
※公立館での募集は各地方自治体の公務員給与となりますのでここでは割愛します。
※学歴・職歴によってある程度変動します。
名の知れた私立美術館や市立・県立などの公立館の場合、正規雇用学芸員の初任給は18-21万円程度が一般的です。※諸手当を含んだ給料記載になっている求人もあるので注意!
こじんまりとした地方私立美術館(正規雇用)なら、16-19万程度が多いと思います
なお、私立美術館の場合は募集要項に給与についての記載がない場合もあります。経験次第で要相談ということでしょう。
ご自身で調べたい方向けに、主要な学芸員求人サイトは以下にまとめています。
学芸員の給与形態は運営母体や雇用形態によって異なる
学芸員の給与形態は、以下の立場によって変わります。
- 公立/私立
- 正規雇用/非正規雇用(会計年度職員や嘱託職員など任期付き)
公立美術館学芸員(公務員)の給料
地方公務員として公立美術館に勤める場合には、(その都道府県や市区町村の)自治体の一般事務職の給与が適用されます。
給与規定に準じて給与額が支払われ、公務員と同様に勤務年数に準じて給与が上がり、福利厚生も充実しています。
学芸員就職としては一番安定した道と言えるかもしれません
私立美術館学芸員の給料
私立美術館の場合、給与はピンキリ。
規模も様々なので、公立美術館に勤務するよりも給料が低くなる可能性も高いといえます。
公立美術館よりは求人数も多く競争率が低い求人もあるので、まずは私立美術館の任期付き雇用で経験を積み、公立美の採用や国立美の公募を狙う人もいます。
定期的に学芸員求人サイトをチェックしていれば、意外に募集があがっていまずので確認してみてください
正規雇用/非正規雇用だけで括れない給料格差
非正規雇用と一口に言えど、その中でも様々な雇用形態があります。
最近では令和2年度より地方公務員法の改正に伴って「会計年度任用職員」が導入され、学芸員非正規雇用の中でも格差や混乱が生まれました
改正前に採用された職員は月給制、改正後に採用された人は時給1000円程度で、長期的に見ると相当な差額になると思います。
そして「学芸員は非正規雇用が圧倒的に多い」でも述べた通り、正規雇用だろうと非正規雇用だろうと仕事内容や労働時間は実質同じです。
仕事ができる人の元に仕事が集まり残業するはめになる...というのは、雇用形態関係なく起こっていますね。(学芸員以外のお仕事も然り)
公務員として雇用される以上は制度として抗えないので、非正規雇用の学芸員に応募する際にはご自身でよく考えましょう。
(おまけ)学芸員の給料は、統計調査では分からない
これは独り言みたいなものですが...。
私自身も学生の時に学芸員の給与について調べていたわけですが、
実際なってみたら、全然違うじゃねえか〜〜!って感じです
賃金構造基本統計調査では学術研究の専門職(正職)が月収39.5万円とありますが、学芸員とはかけ離れていて参考にならないですよね。
学芸員に特化して十分な数の統計をとっているサイトはないですし、学術系の専門職もピンキリですから...。
それに39.5万円という月収例は、あくまで正規雇用+全世代の平均なので、大体の人はこれよりもグッと給与が下がるはずです。学芸員は若い世代がそもそも少ないですし、ほとんどが非正規雇用。
巷の調査で学術研究・専門職の平均年収は500万円半ばだとかなんとか書かれてますけど、美術館学芸員の場合、40代でもそれくらい稼げている人は少ないと思います。世知辛い〜〜〜〜!!
【まとめ】美術館学芸員の給料とライフスタイル
公立美術館に公務員(学芸員枠)として就職するか、それなりに有名な私立美術館に正規雇用として入らない限りは、金銭的に不安が残るのが現実です。
また、大半の美術館はシフト勤務。公務員でも土日祝日出勤ですので、ご家族がいる方はその辺りもネックかもしれませんね。
いずれにせよ、自分のライフスタイルとよく相談することが大切。
カテゴリー「学芸員とは」では、美術館学芸員の仕事内容をより詳しく紹介していますので、興味がある方は読んでみてください。
学芸員を目指している方へ