学芸員の魅力とやりがい、大変なこと|現役学芸員が答えます

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学芸員という仕事の魅力と大変なこと|現役の学芸員が改めて考えてみた

筆者について

現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です

  • 正規雇用の美術館学芸員
  • 公立美術館・私立美術館双方を経験
  • 西洋美術で修士号を取得

本サイトでは、学芸員を目指していた頃の自分が知りたかったこと等を紹介しています

本記事では、学芸員という仕事の【魅力】と【大変なところ】についてお話しします。

学芸員に向いている人、適正や必要になるスキルについては以下の記事▼で紹介していますので、興味がある方はぜひ。

博物館・美術館学芸員の魅力

「好き」を仕事にできる

オルセー美術館
オルセー美術館中央ホール、筆者撮影

学芸員の1番の魅力は、「好き」をとことん追求した仕事ができるという点でしょう

自分の担当展覧会を持ち、作品の魅力をお客さんに伝える役割を担うことができます。

しかし、自分の研究分野に関わる展覧会を担当できる可能性は限りなく低いです。

初めて知る作家や、今まで深く関わっていこなかった分野の展覧会を担当することもあります。

だからこそ学ぶことが多くあり、本当に学び・成長の多い職業です

その分、短期間で知識をつけ勉強する必要がありますが、美術の勉強が楽しい人にはむしろプラスかもしれません。

毎日勉強の日々!

展示や研究を通して、資料や作品に触れられる

博物館学芸員は、展覧会や調査のために作品を間近で見ることができます。

ライトを照らさないと見えない部分や、作品の裏側の著名、展覧会遍歴を見ることができ、時には新しい発見も見つかるのです。

その発見を論文として発表することもできる!夢がありますね

他にも、作品の修復の様子を間近で見ることができたり、作品を寄贈していただくために作家さんのご遺族の個人宅へ伺うことも。

学芸員でないと、なかなかできない経験と言えるでしょう。

人との出会い・刺激が多い

オランジュリー美術館展覧会風景
フェリックス・フェネオン展(オランジュリー美術館)展示風景、筆者撮影

学芸員は、多種多様な業種の人に出会い刺激をもらえる職業です

以下の記事でも紹介していますが、たくさんの業種の方と日常的にお仕事をします。

もちろん、来場者との交流もあります。

来場者アンケートで「ためになった!」「いつも来てます」などの声が聞けると、励みになりますね。

中には、次の展覧会のヒントになる声も!

また、講座や作品解説等で熱心に質問してくださる方、毎回参加してくださる方がいると、それまでの苦労が報われます。

展覧会を通してアーティストや研究者、教育普及活動を通して小中高校の先生、海外の美術館のキュレーターともお仕事をします。

面白い・気の合う同僚・先輩に出会える

これは「人との出会い・刺激が多い」とも似ているのですが、同僚・先輩との出会いとして別にしました。

学芸員の職場は、癖が強い人が多い

一つのことを突きつめてきた人が多いので、良い意味でオタク気質かつ変わった人が多いです。

各々こだわりを持っているので、そんな物の見方があるのかぁと感心させられることが多々あります。

そして、美術を愛する者同士だからこそ語り合える共通の美術話があったりと、気の合う仲間を見つけることができる可能性も高いでしょう。

学芸員の大変なところ

大塚国際美術館
大塚国際美術館、筆者撮影

マルチタスク

あらゆる雑務をこなすことから、「雑芸員」と揶揄される日本の学芸員。

※大きな博物館になると学芸員の人数を多く取ることができるため、業務内容は多少細分化される傾向にあります。

しかし多くの場合は学芸員ひとりひとりが、プレスリリース制作などの広報や学校での出張授業などの教育普及活動全てを担当しています。

その他にも、ポスターやチラシなどのデザイン、個人コレクターからの作品受け入れや他館への作品貸し出し、著作権物の処理、展覧会の図面や構成、イベントの運営やギャラリートークに講演会など書ききれないほどたくさんの仕事があるのです。

具体的な1日を紹介

また、力仕事が多い一方で、繊細な作業が求められる場面もあります。集中力も大切

学芸員は、こうした全く多種多様な仕事内容を一度に受け持つため、なんといってもスケジュール管理が命

様々なことを同時進行でこなしていく点は少し大変かもしれません。

肉体労働のハードワーク

落ち着いて座って仕事をしている時間は正直あまりありません。

お客さんからの質問で展示室に呼ばれたり、打ち合わせや会議があったり、↑のマルチタスクも相まって1日中バタバタしています。

とくに作品搬入から展覧会準備の間は1日中歩き回ることになり、席に着く暇はありません

重いものを運び、釘を打ちつけ、床に這いつくばり、服を汚しながらあっという間に時間が過ぎます(笑)

そして展覧会準備が終わらない日は日付が変わっても展示室にいることも。

バタバタする様子

学芸員はデスクワークというよりは肉体労働なので、慣れないうちは体力的に大変かもしれません

私は初めの数ヶ月、夜8時には文字通り泥のように眠っていました。新しい環境で、気疲れもあったのでしょう

プライベートと切り離せない

「好きを仕事にできるのが魅力」と書きましたが、裏を返せば仕事とプライベートの境目が曖昧

講演会準備や展覧会の企画など、自分の勉強度合い、努力次第でどこまでもこだわれる仕事内容が多いため、家に仕事を持ち帰りがちです。

特に1年目は、仕事では先輩を真似てみたり、新しいことを覚えることで手一杯。

自分が担当するギャラリートークや講義の準備はどうしても後回しになってしまいます。

好きを仕事にしているからこそ、家で美術関連の本を読むことも仕事に思えてきて、メリハリがなくなることも

【まとめ】学芸員の魅力と大変なところ

いかがでしたか?

まとめてみると、こんな感じでした。

学芸員の魅力

  • 「好き」を仕事にできる
  • 資料や作品に触れたり、貴重な経験ができる
  • 人との出会い・刺激が多い
  • 面白い・気の合う同僚・先輩に出会える

学芸員の大変なところ

  • マルチタスク
  • 肉体労働のハードワーク
  • プライベートと切り離せない

学芸員の大変なところ、デメリットでよく挙げられる金銭面ですが、私は正規雇用なので1番の問題ではありませんでした。

でも実際問題、収入が不十分だと生活していけないし....学芸員はなんだかんだ非正規雇用が多いですから、もっと専門性を認められて待遇が良くなればいいのに、と思うのでした。(学芸員の給与面についてはこちら

  • この記事を書いた人
美術館学芸員

りん

現役の美術館学芸員。一度は一般企業に内定を貰うも、その後大学院に進学し学芸員の道へ。公立館・私立館どちらも経験しています。実体験を交えたリアルな情報を発信中!

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