こんにちは、現役の美術館学芸員、りんと申します。
「美術館 レポート」「学芸員 つらい」「美術館の楽しみ方」—— さまざまな検索ワードから、このページにたどり着いてくださった方がいると思います。 このブログを書いている人間が何者なのか、まずは簡単に紹介させてください。
筆者について
- 現役の美術館学芸員(正規雇用・令和採用)
- 公立美術館・私立美術館どちらも勤務経験
- 西洋美術史で修士号を取得
- 1年間の英語圏留学
- 国際シンポジウム・学会で発表経験あり
- 美術館での鑑賞講座・教育プログラムを担当
- 現在育休中
学部時代は美術と関係のない学部に所属していて、就活も経験しました。
一度は一般企業から内定をいただきましたが、それを蹴って大学院へ進学。
西洋美術史を専門に研究し、修了後に学芸員の道に入っています。
つまり、はじめから一直線にこの仕事を目指してきたわけではありません。
迷いながら、回り道もしながら進んできた人間が書いているブログです。
このブログでは、学芸員という仕事のリアルや、美術館をもっと楽しむためのヒントを、できるだけ正直に綴っています。
このブログで書いていること
読者層が少しずつ広がってきて、いまは大きく3つのテーマで記事を書いています。
▼ 学芸員という仕事が気になっている方へ
▼ 美術館をもっと楽しみたい方へ
▼ 子どもと一緒に絵を見てみたい方へ
それぞれの入口から、ゆっくり覗いていってもらえたらうれしいです。
ブログには書ききれなかった話
採用試験のリアル、志望動機の組み立て方、面接でほんとうに聞かれたこと——
ブログに載せるには生々しすぎる話は、note にまとめています。
📖 ブログに書けなかった学芸員志望時代のリアル
📖 合格した学芸員採用試験の全部話します
迷っていたあの頃の自分が読みたかったものを、そのまま置いています。
ここから先は、もう少し個人的な話
学芸員という仕事のなにが好きかと聞かれたら、結局のところ、ひとりで展示室に立つ時間が好きなのだと思います。
午後3時の展示室がいちばん好きです。
朝礼が終わって、団体客の波が引いて、警備員さんが定位置で本を開きはじめる頃。
巡回しているふりをして、誰もいない部屋の隅まで歩いていく。
そこに、机のうえに置かれた水差しと、半分皮を剥かれたレモンと、白い布だけが描かれた小さな絵がかかっていたりする。 水差しの釉薬がまだ濡れているみたいに艶めいていて、しばらく動けなくなる。
ヴュイヤール、ヴァロットン、ボナール、ドニ。
こじんまりしたアパルトマンの角に置かれた花瓶の、釉薬のひかり。
午後の応接間に籠った光が、母親の縫い物の手元に落ちて、針の銀色だけが浮かびあがる瞬間。
ストーブのそばに丸まった猫の毛並みの、灰色のグラデーション。
そういうものを、絵のすみずみまで埋めるように描き込んだ画家たちが、ずっと好きでした。
学芸員になりたいと改めて思ったのは、たぶん、修士論文を書き終えた帰りの電車のなか。
8月の昼下がりで、車両の冷房が強すぎて、向かいの席の女子高生が腕をさすっていた。
あんなにしんどかった研究生活が終わって、それなのに、やっぱりまだまだ美術と一緒にいたいと思った。
論文を書くためじゃなく、絵の前で誰かが息を詰めている瞬間を、すぐ近くで見ているために。
それから何年か経って、いまも展示室で働いています。
昼休みに5分だけ、仕事と関係ない部屋に立ち寄って、好きな絵の前で息を整える。
そういう時間が、まだ毎日どこかにあるからです。

