美術館学芸員の1日のスケジュール【日常編】

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美術館学芸員の1日のスケジュール【日常編】

筆者について

現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です

  • 正規雇用の美術館学芸員
  • 公立美術館・私立美術館双方を経験
  • 西洋美術で修士号を取得

本サイトでは、学芸員を目指していた頃の自分が知りたかったこと等を紹介しています

この記事では、美術館学芸員の1日をご紹介します。

イベント行事などがない、展覧会会期中のごく普通の1日をイメージして作ってみました。

館によってルーティーンや仕事内容は異なりますが、学芸員の仕事のイメージが伝わるとうれしいです。

展覧会準備の1日はこちら/

美術館学芸員の1日のスケジュール【日常編】

8:30 業務開始・朝礼

学芸員職は、早番・遅番など時間をずらした出勤システムが多いです

大体、開館作業を担当する職員/閉館作業を担当する職員で2種類に分かれています。

さて、出勤したらまず、その日の来客やイベント、外出予定、施設管理などを職員で共有します

館のなかで様々なことが起きているので、情報共有はとても大切!

データ共有ももちろんしていますが、意外と見逃しがあるかもしれないし、毎日口に出して1日のスケジュールを確認します。

誰に来客が来るか他の人がわかっていれば、万が一担当者が席を外していても、皆ちゃんと対応できますよね。

(実際には朝礼をしない美術館もあります)

9:00 開館準備・温湿度管理

朝礼が終わったら、開館の準備です!

展覧会によって液晶など機会類のオンオフが必要な場合があるため、その都度作業は異なります。

館によっては、この作業を監視員さんにお願いしている場合もあります。

必須の作業は、各展示室に設置されている温湿度計(自記温湿度記録計・データロガー)の確認と記録です。

データで記録できるようになっていますが、念の為毎日目視の確認を行います。(*展示作品によって温湿度設定は異なる)

データを記録する理由は主に2つあります。

  • 作品に悪影響を及ぼすような温湿度の変化が起きていないか確認するため
  • 継続的な温湿度データの提出を求められる場合があるため

重要文化財や国宝を含む展覧会の開催館に名乗りを挙げた場合、過去3年間の温湿度データの記録の提出を求められたりするのです。(秋開催なら、秋のデータなど)

ここで信頼できる数値を提出できないと開催は困難です。

というわけで、継続的に毎日記録を取り続けるというのはとても大切なんですね。詳しくは、「学芸員の仕事内容」の記事で説明したいと思います。

9:30〜 メールチェック・回覧物や校正を回す

朝のルーティーンを終えると、

  • メールチェック
  • 郵便物・回覧物のチェック
  • 美術館SNSの更新

などに目を通します。

全国の展覧会の情報や、美術館の最新情報が集まってくるので、自然と他の館の様子が分かって楽しいです

ちなみに、他館のチラシやポスターから、次の展覧会の広報物のヒントを得ることもあります

たとえば、「この紙質いいな」「この色の組み合わせが読みやすいな」とか...。

気になったチラシは保管しておいて、デザイナーさんとの打ち合わせの際に使ったりしますよ

また、複数の新聞や雑誌に美術館・展覧会情報の校正も行います。

基本的に早く返すべき場合が多いので、午前中にできるだけ処理してしまいます。

残ったら午後の隙間時間を縫って終わらせます。

11:00 マスコミ取材対応

テレビ取材や雑誌の取材対応も頻繁に入ります。

こういう日は、慌てて綺麗めな格好で出勤。いつもTシャツにジーンズだから...

生放送でニュース番組の一枠に出ることもあれば、用意された質問に口頭で答えたものを記事にしてもらう場合もあります。

記者の方と一緒に展覧会を鑑賞しながら、強調してほしいポイントをお話ししていくという形が多い気がします。

お昼ご飯(1時間程度)

昼に入る前に、2度目の温湿度チェックを行います

温湿度チェックは、美術館によって1日に1回しか確認しないところもあるし、正直館によります。

開館時・閉館時の2回行うというのがベーシックなのではないでしょうか。

さて、お昼中も、展示室からの内線や外部からの入電でバタバタと過ごします

とくに担当展覧会の会期中は、基本的に展示室からの客様の質問に自分が応答するので大忙し!

イベントや展覧会準備中などは、アーティストや先生をランチにお連れすることも。館で食べる場合は、人数分のお弁当の予約なども忘れずに。

13:30 造作屋さんと展示打ち合わせ

お昼後に一人で淡々とやる作業を入れると眠くなってしまうので、午後イチは打ち合わせをいれます。笑

例えば、展覧会前に必ずといっていいほど行うのが、造作屋さんとの打ち合わせです。

サイズや材質、あるいは魅せ方の問題で、館の展示ケースでは対応できない場合、代わりのものを外注する必要があるからです。展示にまつわる色々なものをつくってくれるのが、造作屋さんです。

事前に造作屋さんと打ち合わせの場を設けて、展示のイメージを共有したり、機能や寸法を話し合い、必要なものをつくってもらいます。

予算の関係で自分たちで造作することもあるので、こういった打ち合わせで話が聞けるととても勉強になります。

▼ ちなみに、造作屋さんをはじめ、お仕事で関わっている職業を以下にまとめています。美術館に関わる仕事が気になる方は、是非みてみてください。

14:30 ギャラリートーク

自分が担当する展覧会であれば、定期的にギャラリートークを行います。

市民講座など長時間のものを違い、30分程度のものがほとんど。

お客様との距離が近いので、質問や感想を受け付けていると1時間弱程度になることもあります。

そのうち自分のトークにも常連さんが来てくれるようになり、とても嬉しいですよ

15:00 教育普及の打ち合わせ

教育普及事業も美術館にとって非常に大切。

定期的に館内で会議を行います。

美術館に行った時に、ワークショップの情報を見かけたりしたことはありませんか?あれも、教育普及の一環です

打ち合わせの内容は、例えば...

こんなことを話し合う

  • 地域の小中高校生を招いた鑑賞の授業や、学校への出張授業の方針
  • ワークショップなどの館内イベントの年間スケジュール
  • SNSを通じた新しい取り組み

教育普及は、美術館に「展覧会を鑑賞する」以上の価値を与えたり、普段美術館に足を運ばない人への広報活動でもあります

だから、とても重要なんですね。

教育普及活動は本当に多岐にわたるので、別の記事「学芸員の仕事内容」でも紹介したいと思います。

17:00 収蔵庫にて作品の確認・調査研究

収蔵庫で作業する目的はたくさんあります。

例えば、パッと思いつくのはこんな感じでしょうか。

収蔵庫で作品調査する目的

  • 次の展覧会に出品する作品を選ぶ
  • 次の修復のスケジュールに合わせて、修復の優先度を決める
  • 他の美術館から「貸してほしい」と依頼のあった作品の状態を確認する
  • 収蔵データベースの整理のために現物を確認する
  • 新所蔵作品の記録用写真撮影を行う
  • 論文のための調査

大体、貸出の依頼があった場合、取り急ぎ状態確認することが多いですね。

大きな傷がないかどうか、輸送に耐えうる状態かどうか等を今一度確認します。

18:00 閉館作業・終礼

閉館の時間に合わせて、開館の時と同様に温湿度チェックを行い、異常がないか目で確かめます。

また、来館者の落とし物はないか、作品に異常がないかを確認し、展示物の照明のオンオフなどを行います。

監視員さん・受付さんを含む終礼を通して、1日の出来事を共有します。(お客様から頂いた声、会場内の異常など)

20:00〜 帰宅後、市民講座や展覧会の準備

美術館に残って残業する場合もありますが、持ち帰って家で作業することもあります。

展覧会や講座の準備は突き詰め始めるとキリがないので、家に持ち帰りやすいのかもしれませんね。

とはいえ、参考になる書籍や資料を読んだり、勉強といった意味合いが強いかもしれません。

自分がそれまで知らなかった分野に関する展覧会を持つことも多いですから、業務時間外での勉強はマストだと言えます。

【まとめ】美術館学芸員の1日【日常編】

いかがでしたか?

学芸員のよくある1日の例を書いてみました。

まとめ

  • 基本的には開館時間の1時間前に出勤、開館作業を済ませる。
  • お客様からの質問、予期せぬ来客(自分の作品を見てほしいなど)が多く、常にバタバタしている。
  • 様々な仕事を並行して行うので、タスク管理が大切。
  • 業務時間内では自分の展覧会や講座準備をするのが難しいので、持ち帰ることが多い。

今回は、イベントや展覧会準備なしの1日でしたが....

展覧会準備の怒涛の1日については、以下の記事で紹介しています。

展覧会準備の1日

▼ 学芸員の良いところ・悪いところ

▼ 美術館を支える人たち

  • この記事を書いた人
美術館学芸員

りん

現役の美術館学芸員。一度は一般企業に内定を貰うも、その後大学院に進学し学芸員の道へ。公立館・私立館どちらも経験しています。実体験を交えたリアルな情報を発信中!

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