
現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です
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- 周りの友人10人以上が正規雇用で学芸員に就職した
本サイトでは、学芸員を目指していた頃の自分が知りたかった情報を紹介しています。よろしければ他の記事もご覧ください。
「学芸員 コネ」で検索している人が結構いるみたいです。
私自身も確か、学生時代に検索しました。
検索結果を見ると、学芸員はコネ、教授のコネがないと就職は難しい、という情報を結構見かけます。

不安を煽られる!
ただでさえ少ない空席なのに、自分にはコネがないし無理だろう...そう思ってしまうかもしれません。
そこで本記事では、実際に学芸員として採用された私が思う、「学芸員とコネ」についてまとめてみます。
▼ 実際に学芸員になるまでの経験談はこちら。
前提|志望先によってコネの重要度は変わります
まず、学芸員の就職と一言で言えど、美術館の種類が色々ありますよね。
就職希望先の館が私立か公立かで、コネの重要度は全く違います。
公立の美術館は地方自治体などで採用を決めるものですから、面接に美術館館長が参加する(場合が多い)と言えど、コネは普通あり得ません。
一方で私立美術館の場合は、その辺は「柔軟に」採用が決まりますから、コネで入るのが慣例になっている館もあるのが現状でしょう。
学芸員になるために、コネは必要?
学芸員になるにが難しいと言われる理由に、そもそも採用の枠が少ない!というのがありますよね。
その席を取り合うため、結局「コネ」がある人ばかりポストについているのではないか、という不安を抱くと思います。
特に学芸員を目指している最中だと、あれこれ想像して、必要以上の心配が生まれてきてしまうものです。
コネなしでも、学芸員にはなれる

大半がコネなしで学芸員になっています
筆者はコネなしで公立美術館の学芸員就職に至りました。
私以外にも、周りで10人以上が学芸員(すべて正規、私立・公立同数くらい)として全国に就職していきました。私の知る限り、直接の斡旋をしてもらった人はいません。
学芸員に就職していった先輩の中には、あらかじめ教授やバイト先の学芸員が、受験先の館長へ「うちの〇〇が受験しますので、よろしく」と挨拶してくれたという人もいました。事実そのような「挨拶」があった人の中で落ちた人は、私の周りでは聞いていません。ですが、そもそも受験した人自身にかなりの実力がありましたので、側から見ても挨拶のおかげではないとは思います。そもそも、その人が実力不足だったら教授も先方に挨拶しませんよね…その人に期待しているからこその挨拶。
公立美術館であれば尚コネなしが普通
公立館の場合は人脈やコネによって採用が左右されることはほぼありません。そもそも学芸員(館長含む)はほとんど採用に関わらないです。面接に1人も学芸員がいないことはザラです。私の経験上でも、最終含め面接に学芸員はいませんでした。
実際に学芸員になった後に先輩や館長に聞くと、「面接に参加したこともないし、採用にはあんまり関わってないね〜変だよね〜」と言ってました。(おい)
そこそこ大きな規模の館ですし、館長も数十年学芸員としてキャリアを積んできた人なので、うちの方針が特別ゆるい訳ではないと思います。。
実際に公立美術館で学芸員就職した筆者の例
そもそも私自身は、教授に伏せて学芸員に応募しました。(本当は良くない。。)

豆腐メンタルなので、教授に受験する旨を伝えてプレッシャーになるのが嫌だった...
関係性によっては教授に報告するべきですが、それで自分の負担になって病んでしまうなら、報告しなくたっていいと思います。というわけで私はそもそも周りに受験を伝えていなかったので直接的なコネはないと思います。
しかし、学生時代に教授から紹介してもらった美術館アルバイトをしていたので、その経験は就職に役立ったでしょう。
ただし、コネと運だけで学芸員になる人もいる
悔しいことですが、確かにコネ「だけ」で学芸員席を用意してもらう人もいます。
実際に、コネだけで学芸員の席を用意してもらった人も見たことがあるのです。美術館の学芸員補のアルバイトで一緒になった、別の大学院の人でした。私は学芸員就活中でしたが、その方はもう就職先の美術館を用意してもらっていました。バイト中は寝ているし、研究の内容も定まらず、最後はバイトを飛ぶような人だったのです。何も言わずバイトに来なくなって、社員証も返却せず音信不通。

バイト先の学芸員さんたちも呆れていました。
その方に「私はもう学芸員のポストを用意してもらっているから」と自慢げに話されたときは、さすがに悔しかったなあ。
そんな人でも、コネと運だけで学芸員になれる場合もあります。これでは、100%コネだと言われてもしょうがないと思います。
でもこういう人って、当然ながらかなり少数ですよ。頑張って学芸員になろうと努力している人が気にする必要はありません。
学芸員になるためのコネを作るには
とはいえ、コネは無いよりはあった方が良い。
学芸員就職に繋がるようなコネは、例えばどんなものがあるでしょうか。
今からでも意識できるものがあれば、参考にしてみてください。
【コネに直結】大学院選びで注意してほしいこと
これから大学院進学を考えている、と言う方は、まず大学院を慎重に選びましょう。
理由は、大学院および担当教授選びがコネに直結するからです。
教授・研究室のチェックポイント
- 教授の研究成果、実績
ご自分の専門分野と教授の指導分野についてしっかりと確認しましょう。 - 教授の職歴(学芸員経験の有無)
学芸員経験のある教授であれば、その分学芸員就職への理解も深いです。また、美術館や学芸員さんとのつながりがある場合が多いので、インターンシップやアルバイトの紹介を受けることができます。 - 研究室主導の発表の場の有無
教授が主催する発表会などが活発な場合、外部の先生や美術館の館長が見学しに来る場合があります。学部生でも見学はできることが多いので、機会があるなら参加してみましょう。 - インターンシップ・アルバイトへの考え方
教授が生徒のインターンシップ・アルバイトへ消極的でないかを確認してください。コネに繋がるバイト等の活動を制限されるとかなり痛手です。 - 教授および研究室のメンバーとの、「人間としての相性」
いくら実績のある教授だとしても、人間としての相性があります。長い院生生活になりますし、教授とは一心同体なので後悔のないように。
意外と盲点なのが、教授の学芸員経験です。
もし経験者であれば、学芸員を目指す際にも色々相談乗ってくださると思います。

直接就職先を斡旋してもらうことはなくても、色々良いことがあります。
筆者の場合、教授の紹介でアルバイトをさせてもらった学芸員補としての経験が、面接の際に強みになりましたし。
また、教授が学芸員経験者だと、そもそも学芸員就職に寛容であることが多いです。実は、大学教授の中には学生の就活をよく思わない人も結構います。
教授と関係性が深くなればなるほど、研究室に残り研究者として教授のサポートをすることを期待されたりします。当然快く就活させてくれる人もいますが、就活への考え方が事前に分かるなら把握しておくと安心です。
受験前に教授の授業に顔を出したり、アポをとってお話を聞くことも大切ですね。
コネがなくてもステップアップ方式で攻める
教授と良好な関係を築いていない方、または社会人でそもそも大学院に在学していない方など、コネなんて無理!という人もいると思います。
現役の学芸員や美術館関係者と交流を持つことができる1番の場所は学芸員補のアルバイトです。しかし実感として、学芸室で本格的に学芸員さんを補助するアルバイトの場合、
- 教授からの紹介
- 他の美術館である程度の実務経験を積んでいる
これが求められていることが多いので、結構なハードルですよね。

コネなしで学芸員補のアルバイトに採用されるのは難しい
でも、美術館業務未経験でもやる気次第でステップアップできる方法もあります。
ボランティアなど参加条件の低いものを積み重ね、インターンシップ、学芸員補のアルバイトへ進んでいくやり方です。
ボランティア経験を糧にインターン応募、小さい美術館での複数のインターン経験を売りにしてアルバイトに進む、といった具合です。学芸員は常に人手不足で「経験で採用」が多いので、とにかく小さな場所でも経験を積み重ねることが本当に重要。
ちなみに、筆者も美術系のボランティア、インターンシップ、アルバイトなど色々やりました。以下の記事で確認できますので、よろしければどうぞ。
【まとめ】美術館学芸員とコネについて
本記事をまとめると、こんな感じ。
- コネがなくても美術館学芸員(正規)への就職は十分可能。
- 私立美術館ではコネ採用も存在はする。
- 学芸員就職につながるようなコネを作るなら大学院で。
- 大学院が無理なら、ボランティア→インターン→アルバイトといった具合にステップアップ方式で美術関連での実務経験を積むと◎
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