こんにちは!現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です
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本サイトでは、学芸員を目指していた頃の自分が知りたかったこと等を紹介しています
本記事では、展覧会の直前準備を紹介します。
流れをわかりやすくするために「1日」にまとめてみましたが、実際の展覧会準備は1日で終わるものではありません。
展覧会準備をぎゅっと凝縮したものとイメージしてしてみてください。
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【美術展】作品搬入前日までの準備
展覧会準備をスムーズに遂行するには、前日までの準備が大切。
当日作業員の方に最大限手伝ってもらえるよう、学芸の不手際がないようにします。
- 作品の室内配置を示す指示書を作成する。(作品をスムーズに各展示室へ運び込むため)
- 展示室内の壁に作品番号を割り振る。(どの位置に荷物をおけば良いか、作業員が一眼でわかるよう)
- 解説パネル・挨拶パネル・作品キャプションを作成する。
- 作品点検カード(*)を各々の展示箇所にあらかじめ撒いておきます。(作品の位置を把握しやすくします)
- 展示で用いる展示ケースや道具などは、当日の動線を考慮し整理しておく。
- 使用する所蔵作品がある場合は、収蔵庫内から取り出しやすいようまとめておく。
- 作品の移動に使用する荷台は当日タイムロスなく使えるよう移動しておく。
- 展覧会で来館者に配る作品リストを作成する(最悪、開幕日の当日朝までに)
*作品点検カードとは
作品の状態を記録するカードです。展覧会に出品するたびに作品の状態を目視し、変化を書き込みます。巡回展では同じ作品カードを第1会場から共有し、それぞれの学芸員が書き込んでいきます。異常があれば撮影記録も。
【美術展】作品搬入当日の流れ
★展覧会準備当日の仕事道具については、以下の記事で紹介しています。
8:30 当日の流れを再度共有
日通やヤマトなど当日作業員(*)が来る前に、出入り業者や搬出入のスケジュールを再度共有します。
*当日作業員さんとは?
展覧会準備に欠かせない当日の作業員さんについては以下の記事で紹介しています。気になる方はどうぞ。
また、学芸以外の美術館職員にも、立ち入り禁止区間などを伝えます。
作品が動く日には4トントラックなど複数車両が入ってくるので、駐車場や搬出口に他の車や障害物がないか確認するのも大切。うっかり忘れたりすると、道が塞がりいろんな人に迷惑をかける羽目に...。
重要な変更などの連絡があるかもしれないので、作業開始前にはメールも要確認。
9:00 作業員の到着、作品搬入
大量に運ばれてくる数百の作品を、一気に展示室へ運び込みます。(前日に作った指示書をもとに、学芸が指示を出す)
作品の運搬は基本的に「美術作品運搬のプロ」である作業員の方に任せます。もちろん補助はしますが、下手に手を出さないのが基本です。
10:00 作品の荷解き、作品点検
作品が定位置についたら、どんどん作品の荷解きをしていきます。
梱包を解く際には必ず展覧会開幕美術館の学芸員が立ち会い、作品に異常がないか確認します。(借用先美術館の学芸員が同席していると理想的)
前述した「作品カード」をもとに、ハンドライトで一点一点細部まで確認。マイハンドライトは学芸員の必需品!
異常がないことを確認できた作品から設置にかかります。
作業員さん+学芸員で、壁に釘を打ちつけ並行を測り作品を掛けていきます。
11:00 監修の先生や共催企業担当者の対応など
作業が軌道に乗り始めたら、学芸員は並行して来客対応をします。
展覧会準備期間中は、展覧会を監修している先生、共催のテレビ局や新聞社の担当、作家のご遺族、巡回館の学芸員など多くの方が様子を見に来てくださいます。
担当学芸員は展示準備の指示を出しつつ、来館者のアテンドをしたり、展示に対するご意見をもらったりします。
場合によっては、ここで展示の仕方が変更になることも。臨機応変に対応します。
12:00 関係者と昼食
監修の先生や共催会社の担当の方が来る場合、皆さんの昼食も学芸が準備します。
周辺のお店か、人数分のお弁当を数日前に予約しておきます。
ここで関連イベントの打ち合わせなどの話をしたりもあるあるですね。
13:00 作品展示開始、微調整
作品点検が完了したものから展示していきます。
必要に応じて展示ケースや特製の造作を使いながら納得いく展示を試行錯誤していきます。
館長が様子を見に来てくれてアドバイスをくれたり、他の学芸員にも見てもらったり。。
プロジェクターや液晶や服飾関係の展示物、特殊な立体物がある場合は時間がかかります。
16:00 解説パネル・キャプションなど取り付け
作品の場所がここだ!と確定したら、解説パネルやキャプションを取り付けていきます。
大手企画会社のパッケージ企画の場合はこの辺の解説類も用意されていることがあるんですが、自分たちで発注/製作することも多いですね。
17:00 照明機材の取り付け
仕上げに、照明機材の取り付けです。
作品への負担を抑えながらも、魅力的に見える照度を探します。
最初に部屋全体のベースライトを定めた後、スポットライトの明るさを調整していきます。
照度計を作品と並行にかざしながら、ひとつひとつ確認していきます。
作品の材質によって適切な照度は大体決まっていますが、場合によっては借用先に確認したりしますね...。
疲れが溜まっているからか、私はこの照明の調整が一番辛いイメージがあります...。ライトの種類も本当に色々あってこだわり始めるとキリないです。
19:00 解散、担当は仕上げ作業に残る
お疲れ様でした〜〜
作業員や関係者が帰った後は、担当学芸員が最後の見回り、確認、清掃などを行い、開幕直前準備が完了です。
開幕日の会場前には、看視員さん向けに作品説明会を開いたりするので、その準備も。お客さんと直接関わる機会が多い看視員さんに展覧会をよく理解してもらいます。
展覧会の直前準備を紹介しました
いかがでしたか?
思い出したものからザーッと書いていったので、かなり端折ってはいます。
館や展覧会によってそれぞれですし、学芸員の関与度も様々だと思います。
こういう準備が進められているのか〜〜程度の参考にされば幸いです。
特にイベントごとのない1日のスケジュールも書いてみたので、お時間ある方は覗いていただけると嬉しいです。