筆者について
現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です
- 正規雇用の美術館学芸員
- 公立美術館・私立美術館双方を経験
- 西洋近代美術で修士号を取得
本サイトでは、学芸員を目指していた頃の自分が知りたかったこと等を紹介しています
結論だけ先に言うと、学芸員就職は以前ほど難しくないと思います。(美術館学芸員の場合)
依然として必須能力のハードルが高く求人数が限られているものの、近年は比較的欠員が出やすい状況だからです。
詳しく後述しますね。
ただし実際に「難しい」かどうかは、
- あなたの能力
- 学芸員就職の現状
の組み合わせで決まるものですので、本記事を読み、読者様自身が判断してくださればと思います。
そのための判断基準として、本記事では学芸員就職の必須条件と現状について解説します
学芸員就職の必須条件
必須条件とほぼ必須条件
「学芸員になるのが難しいのか」に答える前に、学芸員を目指すなら最低限必要なことを記載しました
※赤は必須、黄色はほぼ必須、のイメージ
※最低限満たしておきたい条件なので、これを満たしたら学芸員になれるというようなものではありません。
▽ 博物館学芸員資格を取得していない方はこちら
▽ 美術史で修士号を取得していない方はこちら
コミュニケーション能力について
- コミュニケーション能力が高い
- 人前で話すことが苦ではない
この2点を「必須」とまで言うかは、正直迷いました。
しかしこの適性がないと、学芸員として働くのは相当な精神的苦痛を伴います
働き始めて思うのは、学芸員に1番求められるのはコミュニケーション能力と愛想の良さということです。
コミュニケーション能力と愛想の良さが、なによりも大切!!
学芸員に向いてる人って結局、
— りんふぁん@美術館学芸員 (@rinhwan_blog) December 18, 2022
・人や物の小さな変化にすぐ気づく
・フットワークが軽い
・どんなタイプの人ともすぐに打ち解ける
・人前で話すのが苦ではない
・マルチタスク・スケジュール管理が得意
ってことだと思う...
専門知識とか文章力とかは第一じゃない...
いわずもがな、学芸員のお仕事は研究だけではありません
展示時関連の業務や研究は、学芸員の仕事のほんの一部です。
有名な芸術家や大学教授を食事接待したり、大勢の前で講演会、作品解説、また小中高校での出張授業も行います。
並のコミュニケーション能力でずっと続けられるような仕事ではありません。
大勢の人の前で話したり、多くの人と仕事することに不安があるのであれば、学芸員はあまりオススメできないのが実情です。(私自身も苦労していることだからこそ)
美術館での実務経験について
ほぼ必須条件として、
✔︎ 美術館での実務経験
と書きました。
学芸員募集は基本的に即戦力になる人から採用していきます。
常に人手不足なので、すぐに仕事を任せられる人が求められているのは当然ですよね。
私も勤務から2週間で、図録の解説を執筆していました...(でも嬉しかった)
とはいえ、身構える必要はありません。
この「実務経験」には、学生の頃のボランティア・アルバイト・インターンシップなども含むからです。
少し規模の小さい美術館での無償インターンシップからスタートしてみて、少しずつステップアップしていくので十分です。
大学生でいきなり学芸員補のアルバイト、というのはちょっと難しいと思うので、徐々にでOK
学芸員就職の現在
学芸員就職が難しいと言われる理由
一般的に学芸員になるのは難しいと言われています。
その主な理由は以下の通りでしょう。
- ポストがそもそも少ない
- 修士号以上が実質の必須条件である(研究実績が必要である)
- 人脈やコネが重要である
修士号以上が必要というのは事実ですが、①と③はそうとは限りません。
というのも、「①ポストが少なく③コネが大切」というのはどちらも昔の話だと言えるからです。
学芸員募集状況は近年安定している
まず、学芸員の採用人数はここ数年安定しています。
正規職員の学芸員募集も数十年年前と比べれば多くなりました
ちょうど日本国内の学芸員の世代交代の時期なので、学芸員として就職するなら今はチャンスだと言われています。
そこそこの規模の公立館の募集も定期的に募集を出していますので、学芸員求人サイトは常にチェックしておくようにしましょう。
見回り必須の掲示板は以下の記事内でも紹介しています。
\学芸員の求人情報調査!/
人脈とコネという考え方はやや古い
「求人募集は形だけ、学芸員就職には人脈やコネが大切だ」と聞いたことがあるけれど...
あるに越したことないかもしれませんが、人脈は皆無でも全く問題ないですよ
就職先の美術館による、と言ってしまえばそれまでですが、私立の場合には人脈で決まることも多少あるかもしれません。採用権が自由だからです。
しかし公立館の場合は人脈やコネによって採用が左右されることはほぼありません。
そもそも学芸員(館長含む)はほとんど採用に関わらないです。面接に1人も学芸員がいないことはザラです。地方自治体の職員が面接をするので、美術関連の人脈があったところで...な感じはあります。
努力して実績を積めば、人脈とコネは不要!
私自身も公立館採用ですし、最終を含めても面接に学芸員はいませんでした。教授も含め研究室の誰にも伝えずに学芸員採用試験を受験していますので、コネなしと言えます。
人脈やコネがないことを理由に学芸員を諦める必要は全くないですよ。
とはいえ、ないよりあった方が良いはず。何かできることは?
自分で人脈を作ることも十分可能ですよ
例えば学生であっても、研究室や大学、アルバイトを通して人脈を作っていくことができます。
「学芸員になるためには人脈が必要なのか」については、以下の記事で詳しく書いているので興味があるからは覗いてみてください。
【おまけ】まずは学芸員補という道もあり
いきなり正職員として学芸員になれなかったとしても、まずは任期付き雇用やアルバイト、可能なら学芸員補という形も視野に入れておくのが基本です。
実際正規の学芸員になった人も、その多くが非正規雇用としての経験を経ていたりします。
そのような正規雇用以外の雇用形態も、上記で触れた学芸員求人サイトに募集がかかるのでチェックしておくと良いでしょう。
ちなみに美術館博物館の受付や看視員の募集に関しては、一般的なアルバイト募集サイトなどでも見かけるので探してみてください。
【まとめ】学芸員就職は本当に難しいのか?
いかがでしたか?
学芸員就職の最低条件をクリアしている(する予定の)場合、現状は(昔ほどは)厳しくはないと書きました。
インターネット上には、実際に学芸員になった私が見ても大袈裟すぎる情報が結構あり、不安を煽る情報ばかりだなぁと思ったので記事にしてみました。
学芸員就職口が増えてきているのは事実なので、学芸員を目指すとしたら今はとてもいい時期と言えますよ。
学芸員を目指してやる!という方はこちら
学芸員を目指す勇気がでないという方はこちら