筆者について
現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です
- 正規雇用の美術館学芸員
- 公立美術館・私立美術館双方を経験
- 美術とは関係のない学部を卒業
- 西洋美術で修士号を取得
本サイトでは、学芸員を目指していた頃の自分が知りたかったこと等を紹介しています
この記事では、学芸員になるために役立つ大学選びのポイントをご紹介します。※本記事では「美術史専攻の美術館学芸員志望」を例に話していますので、ご自身の専門に置き換えて考えてください。
すでに大学在学中の方も実践できる内容を記載しています
※博物館学芸員資格を取得できる通信制大学をお探しの方は、以下の記事で紹介しています。
学位は持っていて資格のみ取得したい!という方は、お役立てください。
美術館学芸員に"なれない"大学・学部は基本ありません
美術と全く関係のない学部に在学中。文学部に入り直さないと学芸員になれない?
基本的に気にしなくてOK。ただし大学院では専門を極めること!
まず前提として、この大学・学部に入ったから美術館学芸員のへの道が断たれる、後戻りできない!
なんてことは基本的にはないと言えます。
理由は以下の通りです。
- 大学レベルの美術の知識は自分でも十分に学ぶことができる
- 学芸員資格は一応大学院でも取得できる
- 学士の専門が美術史であることを採用条件にしている美術館はほぼない
たとえば、美術系の学部を持たない大学の理系学部に所属していたりしても、応募条件の時点で学芸員の道を断たれることはないです。
ちなみに私自身は美術とは関係のない国際系学部卒です
しかし!学部が忙しすぎて美術史学習の時間等を一切取れないなら、学部変更を考えるべきかも。
もちろん学部の頃から美術史専攻を選ぶのが1番良い道なのかもしれません。
ただ、私が所属する館(ごく一般的な公立館)や知り合いの館の学芸員内訳をみると、半数程度は意外にも美術史以外で学士号をとった人たちです(院では美術史専攻)。
なので個人的な意見ですが、学部のうちに美術史を学ぶことにはそこまで固執する必要はないと思います。
美術史以外で学士号を取った美術館学芸員は意外と多い!
学芸員を目指す!大学選びのポイント
※一言で学芸員といっても分野は幅広いので、専門知識についてはここでは割愛します。自分が学びたいものを見つけましょう!
さて、学芸員を視野に入れて大学選びをする場合、以下の点について注意目してみると良いと思います。
それぞれ解説していきます。
東京や大阪など大都市の大学か
仮に「東京や大阪などの大都市」としましたが、つまりは周りに美術館や博物館がたくさんある場所で大学生活を送ってください。
理由は、
- 展覧会やイベントへ気軽に参加できるから
- 美術関連のアルバイトやインターンシップの募集も多いから
です。
座学は最悪自分でできるのですが、こればっかりはどうしようもない!
時間がある大学生のうちに、気軽に画廊に立ち寄ったり、定期的に展覧会を鑑賞したりできる環境に身を置くことを強くおすすめします。
学芸員を目指すなら、美術館でのアルバイトやインターンシップは大きなアドバンテージになりますから、できるだけそのような機会をキャッチできる場所に身を置きましょう。
※無料資料請求可
同大学院に希望専攻があるか
学芸員になるには基本的に【修士号以上】の学位が必要。大学院に進学し修士論文を執筆する必要があります
募集要項に必須条件として書かれていないこともありますが、応募者(ライバル)のほぼすべてが修士号以上取得者と考えてよいでしょう。
学部で美術史専攻に進む必要性は高くない一方で、美術史専攻の大学院へ進学することは必須です。
それを考慮すると!
付属大学院に美術史専攻がある大学に進学しておくと、後々やはり楽
というのも、同大学内に在学していると大学院入試の情報自体が収集しやすいから。
(同大学他学部の人間は)大学院入試の際に「外部入学」扱いになりますが、他大学の人より入試の情報収集が集まってきます。(入試は情報戦なところがあるのでこの点は大切)
大学院入試以降のことを考えると、初めから文学部美術史専攻に進むか、そうでなくとも大学内に美術史専攻が存在する大学を選ぶのが善策
大学院について調べて大学を決めるのも賢い選び方でしょう。
※無料資料請求可
語学力を伸ばすことができる環境の大学か
二つ目のポイントは、語学力を伸ばすことができる環境の整った大学を選ぶこと。
これは、西洋美術専門の方向けかもしれませんね。ぜひ、英語を「話せる」学芸員を目指してください。
地方公立美術館でも、意外と英語は使うんです
都内の有名私立美術館でなくても、案外海外美術館とのやりとりってあるんですよ。(このご時世なのでWeb会議ですが)
英語話者不足は、他の学芸員とも意見が一致する問題です。
「英語は大切」という超当たり前の事実がありながらも、英語を話せる学芸員というのは意外と少ないです。
学芸員を目指している西洋美術史学徒なら、英語の読み書きは人並み以上にできると思いますが、「流暢に話すことができる」も是非目標にしてみてください。
※無料資料請求可
筆者の各テストスコアはTOEIC925点、TOEFL iBT105点(共に留学前スコア)です。こちらの記事では、私が高校生の頃に実践していた英語学習ルーティーンやツールをまとめています。
附属図書館は充実しているか
大学附属図書館の充実度はとても重要です。
例えば、以下のような項目を目安にするといいかもしれません。
蔵書数
国立では東京大学、京都大学、九州大学、東北大学、そして私立であれば早稲田大学、慶應大学、日本大学、立命館大学、同志社大学などが大学蔵書数ランキングトップです。
(参考:「アエラムック2022大学ランキング」朝日新聞出版)
サブスクの活用・提携
図書館でサブスクってどういうこと?
大学図書館は、新聞社のサブスクと連携・購読している場合があるんですよ。利用しない手はないです!
学生は大学に所属さえしていれば、無料&オンラインから新聞や雑誌にアクセスし放題というサービスです。
学内のパソコンからのアクセスを基本とする学校もあれば、自宅からでも利用できるところもあります。
サブスクが充実していると、現物を見ることができない海外雑誌や150年以上前の新聞の記録にアクセスできたりと、研究がめちゃくちゃ捗ります
例えばNYTimesは検索機能で1851年以降のものを検索で参照することができ、当時の展覧会評などをチェックできます。
▼ 他にも研究に役立つデータベースやウェブサイトについてまとめていますので、気になった方はこちらからどうぞ!
他大学との連携
大学によっては他大学の図書館に出入りすることができます。
蔵書の貸し出しまではできない場合が多いですが、書籍の閲覧&コピーがとれるので重宝しました。
美術図書館検索で読みたい本を検索し、提携の大学に行って閲覧することが可能です。
OB・OGの方でも利用できることもあるので、母校を調べてみてもいいかもしれません
【学芸員を視野に】大学の授業への心構え
読者様が比較的規模の小さい大学・美術系以外の学部に所属している場合、注意点(ぜひ実践してほしいこと)があります⇩
他学部・他大学の授業にも貪欲に参加する
特に美術史系以外の学部に在籍する方に実践してほしいことです。
自分の学部・大学以外でも、興味がある美術史の授業を見つけて可能な限り参加してみましょう。この際、教授の許可は必ず取ってください。
他の学部・大学の授業に顔を出す理由
- 単純に知識を深めるため
- 大学院入試の傾向を探るため
- 美術史の教授と繋がりを持つため
- 志望する研究室の先輩と繋がりを持つため
私が所属していたのは国際系の学部でしたが、学部生3年・4年のころは、他学部の美術史の授業を履修あるいは教授の許可を得た上で「もぐり」をしていました。
正式に受講できなくても、教授本人に聴講しても良いか許可をとれば、大体OKしてくれるはず。
この辺りは大学別のルールもあると思うので、希望の大学の決まりを確認してくださいね
【超重要】希望研究室の教授が開講している授業に参加する
院試で受験したいと思っている研究室の教授が開講している授業には、出来るだけ顔を出しましょう。
これがかなり重要!
教授に顔を覚えてもらえるため(挨拶も兼ねる)、教授の研究内容について理解を深めるためです。
教授によっては、受験前に1度も顔を出さないことに厳しい人もいます。
複数回授業に出たら、授業後に挨拶をしにいきましょう。
授業の感想、教授の研究室に入りたいと考えている旨などを伝えたいところです
また、授業には研究室の先輩が先生のサポート役としてついている場合も多くあります。(資料の配布をしている人など)
運が良ければ、教授に先輩を紹介してもらえますよ。
研究室で過去問をもらえるチャンスですので、是非積極的に交流するようにしましょう!
受験する大学院専攻の他教授が持つ授業を受講する
少々分かりづらいですが、たとえば大学院美術史専攻に所属するA先生(現代美術)の研究室に入りたいなら、同じ美術史専攻内に所属するB先生(東洋美術)の授業も受講するべき、ということです。
大学院入試の傾向を掴み、対策するために役に立ちます
目指す大学院によって試験内容は異なりますが、入りたいと思っている専攻に東洋美術や日本美術専門の教授がいたらその分野の問題が出るもの。
それぞれの教授が出題を考えますから、各授業に出ることは大切です。
その他の注意点や、よくある疑問は以下の記事にまとめています。よろしければ、チェックしてみてください。
学芸員の筆者はどうやって大学を選んだか 【おまけ】
うちの美術館で英語を話す学芸員は、2人とも同じ国際系学部出身です。
先輩も学部では美術をやっていなかったそうですが、とても教養が深く専門知識豊富です。
この経験も相まって、学芸員志望の方にも国際系学部を視野に入れてほしいと思っています。
私は高校生の頃、英語も好きだし、美術も好きだったので、どちらも活かしたいなあと漠然と考えていました。
高校生の頃、こんな風に考えていた
- 美術史の知識なら(好きなので)独学&座学で基礎を学ぶことができるはず
- 英語も話せる学芸員になりたい
- でも、英会話の経験はほとんどない。話せるようになるには、英語に囲まれた環境に身を置いて鍛えられないと無理そう
この3つの考えの結果、国際系の学部に身を置きながら美術の勉強は独学でやる。という方向性に決めました。
正直かなり苦労はしたのですが、これは正解だったなぁと今となっては思っています。
大学の授業についていこうとすれば、英語は自然と話せるようになったし、授業で美術をガッツリやったりはしないけれど、好きなので独学できました。
大学院の教授の授業も事前に受けたことで、教授や研究室の先輩の雰囲気を知ることができたんです。
【ポイントまとめ】学芸員になるための大学選び
まとめると、こんな大学をオススメします。
あくまで私個人の意見ですが、参考になれば幸いです。
大学選びのポイントまとめ
- 美術館が多く所在する都会にあり
- 外国語学習にも力を入れていて
- 学部・大学院に美術史専攻があり
- 附属図書館が充実している
- +学芸員資格を取得できると◎
納得いく大学選びをすることも大切ですが、自分がどのような大学生活を送るかはもっと大切。
当ブログでも、そのヒントになるような情報を発信していきたいと思いますので、時々覗いてもらえると嬉しいです♪
▼ 私が学芸員になるまでのお話はこちらに書いています。興味がある方は、よろしければどうぞ。