家に絵を1枚飾ったなら、子どもと遊び倒しましょう!
ちょっとした声かけひとつで、なんでもない夕方が少し変わります。
並べる、数える、真似する、外に持って行く...。
この記事では、子どもと楽しめる名画を1枚ずつ例に挙げつつ、その絵で何して遊ぶかまで、季節・モチーフ・暮らしのシーン別にまとめました。気になる作品があれば、目次からそのまま飛べます。
春の絵あそび
モネ《春》|木漏れ日を外に持って行く
クロード・モネ《春/読書する女》
この絵を飾ると、いつものお散歩が宝さがしに変わります。
木の下で本を読む女の人に、葉っぱのすきまから光がちらちら。その光を、モネは線じゃなく淡い色の粒で置いていて、輪郭はふわっとにじんでいます。のどかな春の昼下がりが、そのまま絵になったよう。
やることはかんたんで、お散歩のときに「絵とおなじ光、どこかにないかな」と探すだけ。
公園で木の下に立って、地面に揺れるまだら模様を子どもと見上げる。
帰りに拾った葉っぱや花を、絵の横に並べてみる。
「これ、絵の中にもあるね」と置くだけで、絵と外の世界がつながります。
お散歩に連れて行くなら、ポストカードも◎
ドニ《純潔の春》|「何してるの?」を想像する
モーリス・ドニ《純潔の春》
「この人たち、何してるんだろうね?」。答えのない「なんだろうね」を、子どもと楽しめる1枚です。
水色や白の服の女の人たちが、細い木立のあいだにふわりと浮かぶように立っている。
足元には水が光って、まわりに白い花。人も木も細かく描き込まず、平らな色でぼんやり。だから、夢のなかをのぞいたみたいでフワフワと、なんだか不思議です。
はっきり「何をしている場面」と描かれていないので、想像を広げる余白がたっぷり。
入園・入学のころに飾ると、なんだか背中を押してくれる気がします。
夏の絵あそび
ゴッホ《ひまわり》|本物と並べる
フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》
夏にひまわりが咲いたら、ぜひ本物と並べてみてください。
水色の背景に、ぎゅうぎゅうに活けられた黄色いひまわり。よく見ると、ただの黄色じゃない。
明るい山吹色のもあれば、茶色っぽくしおれかけたのも、芯が赤くなってきたものもあります。
ベランダや庭でひまわりを育てているなら、咲いた日に絵の横に置いてみる。
近所で見つけたひまわりの写真を撮って、おうちで絵と見比べてもいいですよね。
「絵のひまわりと、本物のひまわり、おなじ黄色かな?」と並べると、どっちも一輪ずつ色が違うことに気づきます。
北斎《神奈川沖浪裏》|お風呂で波、富士山さがし
葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》
お風呂で波をつくって、小さな富士山をさがす。体をつかって遊べる1枚です。
大きな波が、いままさに砕けようとしている、その一瞬。白い泡が、指みたいな形にデザインされて広がっています。
本物の波はこんなふうには砕けないのに、北斎の手にかかると、水がくっきりした模様になる。
まずはお風呂で波の再現から。手で水を押して、絵みたいな大きい波がつくれるかやってみる。
砕ける瞬間の白い泡を、湯船の水しぶきで真似してみる。
それから「富士山さがし」も鉄板です。
ぱっと見は波が主役ですが、画面の真ん中、波の谷間に、白い富士山が小さく顔を出しています。
「あの波の向こう、ほら、富士山がいるよ」と教えると、絵の見え方がガラッと変わりますよ。
スーラ《グランド・ジャット島の日曜日の午後》|近づいて、離れて
ジョルジュ・スーラ《グランド・ジャット島の日曜日の午後》
近づくと小さな点、離れるとちゃんと絵。子どもと「近づいて・離れて」を繰り返したくなる1枚です。
公園でくつろぐ人たちを、スーラは絵の具を混ぜずに、色の点々だけで描きました。日曜日の昼下がり、日傘、ヨット、木陰。よく見ると、犬やおさるまで紛れ込んでいます。

まずは絵に近づいて、ぜんぶ点でできているのを確かめる。そのあと離れて、点が景色に変わる瞬間を見る。この行ったり来たりが、地味に楽しい。
「おさるはどこ?」「わんちゃんは何匹いる?」と、探し絵としても遊べます◎
この「近づいて、離れて」は、そのまま美術館でも使える遊びです。
そのうち本物の前でやってみたくなったとき、何歳から連れて行けるのかは気になるところですよね。
秋の絵あそび
モネ《積みわら》|夕焼けと見比べる
クロード・モネ《積みわら 晩秋の日暮れ》
夕方のお散歩のとき、西の空とこの絵を見比べる遊びがおすすめです。
夕日をあびて、わらの山がうっすらピンク。空も、緑がかった桃色に暮れていく。
よく見ると、わらは茶色じゃなくて、ピンクや紫の筆あとでできていますね。
モネは同じ積みわらを、朝・昼・夕方・雪の日と、光を変えて何枚も描きました。これはその秋の日暮れのバージョンです。
「今日の夕焼け、この絵に似てるかな」と見比べる。
毎日空の色が違うことに、子どもが先に気づいたりします。
ミレー《落穂拾い》|ごはんとつなぐ
ジャン=フランソワ・ミレー《落穂拾い》
毎日のごはんが、もとは畑から来ていること。それを絵で見せられる1枚です。
夕方近い畑で、3人の女の人が黙々と、落ちた穂を拾い集めている。ぱっと見は地味だけど、金色にかすんだ光のなかで、その姿はどっしり大きく、静かで堂々としています。ただ畑を写しただけにしない、この「描き方」こそ、名画のゆえんです。
パンやごはんを食べるときに、絵を指さして「このごはん、どこから来たのかな」とつなげる。
お米や麦の穂を実際に見せられたら、なお楽しい。(JAのバケツ稲など!)
広重《真間の紅葉》|拾った葉っぱと赤くらべ
歌川広重《名所江戸百景 真間の紅葉手古那の社継はし》
真っ赤な楓の枝が、遠くの景色を額縁みたいに縁取る。そのすきまから、川と山をそっとのぞき見る感じ。
拾った葉っぱを持って帰って、絵の赤と並べてみる。
「絵の赤と、葉っぱの赤、どっちが濃い?」と見比べると、赤にもいろんな赤があると分かります。
奥の深い青と、手前のオレンジ。版画ならではの、平らでくっきりした色の対比が、そのまま色の話の入り口になります。
▷ お散歩に連れて行くなら、ポストカードも◎
冬の絵あそび
広重《愛宕下藪小路》|雪の日の格好を見る
歌川広重《名所江戸百景 愛宕下藪小路》
雪が降った日に飾ると、窓の外と絵の中で、雪見が二倍楽しくなります。
しんと雪の積もった通りに、雪をかぶった竹が重たそう。広重って、見たままを写さないんです。雪も竹も、いちばん気持ちいい形にぐっと省いて、真っ白な画面に青い水路だけをキリッと効かせる。その引き算のうまさがかっこいい。こういう絵を「きれいだな」と眺める時間が、子どもの「いいな」の物差しを少しずつ育てていく気がします。
傘をさした人たちが、雪の中を歩いています。
飾ったら、今度は絵のなかの人に注目です。「この人たち、何を着てるかな」「傘は何色がいい?」と、窓の外の雪と行き来する。空を飛ぶ鳥を数えるのも、いつのまにか絵の中に引き込まれておすすめです。
ブリューゲル《雪中の狩人》|探検・探し絵
「犬は何匹?」「すべってる人どこ?」。まるで探検絵本みたいに遊べます。
1枚のなかに、冬の村がまるごと詰まっている。犬を連れた狩人が坂を降りていく先に、凍った池でスケートする人、坂の上のたき火、木にとまった鳥、遠くの教会。全部小さく、でもちゃんと書き込まれています。
見つけっこをしていると、毎回ちがう発見があって、大人まで夢中になります。
何度飾っても、そのたびに新しい何かが見つかる1枚です。
モネ《かささぎ》|影は黒じゃない
クロード・モネ《かささぎ》
まずカササギさがし、それから「影の色くらべ」。ひとつの絵で、ふたつ遊べます。
雪の積もった柵の門に、黒いカササギが一羽、ちょこんと。最初は「カササギさん、どこ?」から。
見つけたら、次は雪に落ちている影をよーく見てみてください。
影って黒だと思いがちなのに、この絵の影は青いんです。
ためしに、春に飾ったモネ《春》の、草の上の影と見比べてみる。
あっちの影と、こっちの雪の影。おなじ「影」でも、色が全然ちがう。天気や地面の色で、影の色って変わるんですね。子どもより先に、大人が「ほんとだ」と言ってしまう遊びです。
モチーフで"絵あそび"
季節とは別に、「絵に描いてあるもの」から遊ぶこともできます。
動物、たくさんの人、食べ物、水。
子どもが食いつくモチーフって、だいたい決まっているんですよね。
動物の絵で「鳴き声ごっこ」
アンリ・ルソー《夢》
動物が描かれた絵は、鳴き声ごっこの宝庫です。
ルソーの平らでふしぎなジャングル、シャガールの空に浮かぶ牛やロバ。絵のなかの動物を見つけて、その鳴き声を真似してみる。
「ライオンはどこ?」「この子は何て鳴くと思う?」
1匹ずつ探して、家じゅうを動物園にしてしまう。
体を使う遊びなので、まだ言葉が出ない小さい子でも一緒に楽しめます。
ルソーの《夢》なら、草のあいだからライオンがのぞいて、へびや鳥もかくれています。
たくさんの人の絵で「探し絵」
ピーテル・ブリューゲル(父)《子供の遊戯》
230人の子どものなかから、知ってる遊びをさがす。大人まで夢中になります。
なんと80種類以上の遊びが、町を上から見渡すように描き込まれています。樽にまたがる子、輪っかを転がす子、おんぶ、逆立ち。今でも見かける遊びがいっぱいです。
「逆立ちしてる子どこ?」「この遊び、やったことある?」
大人が見ても全部は見つけきれないので、何度飾っても飽きません。
探し絵ができる絵は、常設展でも結構見つかります!
企画展よりも空いていることが多いので、子どもと小声で「どこ?」をやるならこっちのほうがおすすめ◎
食べ物の絵で「おなじもの探し」
ポール・セザンヌ《りんごとオレンジ》
食べ物の絵は、冷蔵庫とつなげて遊べます。
セザンヌのりんご、ミレーの畑。絵を飾ったら、冷蔵庫から実物を持ってくる。
「絵のりんごと、うちのりんご、おなじ色かな」
並べてみると、セザンヌのりんごが赤一色じゃなくて、緑や黄色まで混ぜて描かれているのが分かります。
水の絵で「触れない水」を見る
モネ《ラ・グルヌイエール》
「触りたいのに触れない水」は、子どもにとってすごく不思議なもの。
モネや北斎の水の絵を飾ると、うちの子はモネの水面をじーっと見て、なぜか眉をひそめてヨダレを垂らしています😂
指で水面をなぞる真似をしたりするのも楽しいですね♪
モネのふわっとした水面と、北斎のくっきりした波。おなじ水でも、描き方が全然ちがうのを見比べるのも楽しいです。
※「絵を見ながら子どもと話す」やり方そのものに興味がわいてきたら、それは"絵あそび"の一歩先。質問の仕方やコツは「家庭でできる対話型鑑賞|おうちVTSの始め方」にまとめています👇
飾る場所で"絵あそび"
同じ1枚でも、どの部屋に飾るかで遊び方が変わります。
うちは季節の変わり目に1回、掛ける場所ごと見直すくらいです。
毎日動かす必要はないので、まずは「いちばん長く目に入る場所」から決めると失敗しません。
※ぬれる場所はもちろんですが、直射日光の当たる壁は避けておきましょう!(日焼け防止)
リビング|いちばん長く目に入る1枚を
家族がいちばん長くいる部屋には、何度見ても発見がある絵を。
ブリューゲルの《子供の遊戯》や《雪中の狩人》みたいな、描き込みの多い絵が向いています。
ソファに座ったときに正面にくる高さだと、ふとした瞬間に「あ、この子はじめて見た」が起きます。
一目で分かってしまう絵より、飽きるまでに時間がかかる絵のほうが、この場所には合っています。
食卓のそば|ごはんと絵をつなげる
食べ物の絵は、ごはんが目の前にある場所に飾るといちばん効きます。
ミレーの《落穂拾い》なら、パンを食べているときに「これ、どこから来たんだろうね」と指させる。
セザンヌの《りんごとオレンジ》なら、冷蔵庫のりんごを持ってきて横に並べる。
絵と実物が同じ視界に入るだけで、子どもが勝手に見比べはじめます。
子どもの部屋|目線の高さまで下げる
大人の目の高さに飾ると、子どもにとっては天井の飾りです。
床に座ったときの高さに合わせるだけで、絵が「自分のもの」になります。
寝る前にゴッホの《星月夜》を飾っておいて、電気を落としてから星を数える。
「お星さま、いくつあるかな」と数えているうちに、だんだん眠くなってくる。
絵を見ながら寝るのが習慣になってきたら、同じ遊びは絵本にも持ち込めます。
「これ何してるんだろうね」と話しかけやすい本が何冊かあるので、寝る前の1冊に混ぜてみてください。
玄関|出かける前に一瞬だけ見る
通り過ぎるだけの場所なので、パッと見て分かる1枚を。
北斎の《神奈川沖浪裏》や、モネの《春》みたいな、外の天気と行き来できる絵が使いやすいです。
「今日は絵より晴れてるね」「今日は絵の海より波が高そう」
靴を履きながらのひとことでも、毎日続くと立派な絵あそびになります。
まとめ|絵は、答えじゃなくてきっかけ
絵の前で「何をするか」って、難しく考えなくて大丈夫です。
毎日やる必要もありません。気が向いた日に、ひとつ。
それで十分だなと、半年やってみて思っています。
絵は答えを教えてくれるものじゃなくて、子どもと過ごす時間の、ただのきっかけなんですよね。
「そもそも、絵を見るのって子どもにどんな影響があるの?」と気になった方は、子どもの「考える力」が育つ美術鑑賞|7つのメリットをご覧ください。
次の1枚を選ぶときは、「子どもに名画を見せたいなら、家に1枚飾るのが一番早い」の5選も参考にしてもらえたら嬉しいです。
とは?-思考力を育てる鑑賞教育-2.webp)


とは?-思考力を育てる鑑賞教育.webp)
