学芸員を目指すことに疲れてしまった人へ

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学芸員を目指すことに疲れてしまった人へ

こんにちは。
現役学芸員のりん(@rinhwan_blog)です

この記事では、私が苦しみながら学芸員を目指してきて率直に感じたことを書いています。

私自身は「学芸員を目指すの、もうやめようかな〜〜」とずっと思っていた人間でした。

(一度は普通に就活して内定までもらっておきながら、蹴って院進した身です...)

誰か1人くらい、同じような道を辿ってきて辛い気持ちの人の役に立てればいいなと思ってます。

こんな方向けの記事です

  • がむしゃらに学芸員を目指してきたけど、正しい選択か不安になってきた
  • なかなか学芸員採用が決まらなくて辛い
  • 今までこんなに頑張ってきたのに、違う道に進むのが怖い

頑張ってきたこと

あなたが人生で1番頑張ってきたことは何ですか?

ずっと継続して取り組んできたことはあるでしょうか?

家族や友人に、「あの人と言えばこれ!」と言われているものは何でしょうか。

私の場合は、美術でした。

小さいころから絵を描くのが好きで、絵画コンクールで賞をとったり、美術部の部長だったり、子供なりの自信はあったように思います。母に喜んでもらうのが嬉しかったし、友達にすごいと言われるのも嬉しかった。

でも絵描きになりたいとは思ったことはなかったんです。絵描きって現実的な響きに思えなかったし、絵に関わりながらきちんとお金がもらえる(当時は学芸員はお金がもらえると思っていた笑)職業に就きたいと考えていました。

そして、学問としての美術に向き合う道を目指すようになります。

学芸員です。

学芸員資格は容易に取得できても、学芸員としての就職はかなり狭き門。

西洋美術専門であれば、最低でもバイリンガル以上(2か国語以上)、修士号以上は実質必須ですよね。

さらに学会発表や論文の質等も審査されます。公務員での採用となれば、当然公務員試験も受けることになります。少ないポストを、すでに現場にいる学芸員や同じ研究室の博士と取り合うことになるのです。

(ちなみに学芸員の道のりについてはこちらで書きました。興味がある方はぜひ。)

高校生の頃は国際公務員になりたいと思った時期もありました。とある会社が、すべてのお金を負担して留学させてくれるプログラムをやっていて、それに参加したんです。全国から選抜された子たちが集まっていてとても刺激を受けました。国際貢献を目指す子が多かったので、そこで語学や国際問題に関心を持ちました。

この経験もあって国際性を重視した大学・学部を選びます。美術の知識は自宅である程度学べるますが、語学や異文化は日常的に触れる必要があると思ったからです。

この頃、アルバイトも美術系ばかり選んでいた私は、学芸員を目指す方向で気持ちが固まってきていました。

留学先でも美術史を専攻していましたし、現地のアートギャラリーでアルバイトをしていました。自分の中である意味視野が狭まり、美術のことしか考えられなくなっていきます。

学芸員に、そこまでしてなりたいか?


でも、私ぶっちゃけこう思ってました。

私、そんなに美術のこと好きじゃないのかも?

学芸員、学芸員、と思い詰めるあまり、なんか美術が嫌になりはじめてきてたんです。

絵を描くとか見るとか、ある程度は好きだけど、プライベートでも仕事でも常に考えていたいレベルでは好きではないのか。学芸員、目指してて良いのかな。学芸員は狭き門、就職は難しい、と聞くし、中途半端に目指して何になるのかな?とか...。この気持ち、実は高校生の頃からうっすら心の底にあったんです。ずっとずっと、見て見ぬふりしてきました。

家族も、友人も、私=美術だと思っていたから、今更言い出せなかった。皆、私が学芸員になりたいのを知っているし。

今更美術が好きじゃないかも、なんて辞めたりしたら、学芸員に「なれなかった」と思われる。学芸員に「ならなかった」なのに。

そんなふうに思ったんですね。

全くプライドと意地というものは厄介なものです。

でも、私が学芸員への道をそのまま突き進んだ理由はもう一つあります。

努力を手放す勇気

ここまで学芸員になるために賭けてきた自分自身の「努力」です。

大学生の頃は遊ばず、予習復習、他の勉強に全ての時間を使いました。

毎晩眠れず、泣きながら大学に行きましたし、大学院では色々なことがうまくいかなくなり、心を病んで耳も聞こえなくなり1か月以上熱が続いたときもあった。

それでも学会の口頭発表、国際シンポジウム、論文の執筆等取り組んできました。

正直言って、華やかな学生生活とは程遠かったのです。

学生時代のクラスメイトは留学生と帰国子女が9割を占めていたから、普段の生活で日本語を話す機会なんてほとんど無くてヘトヘトでした。

授業でも、授業の外でも、劣等感にさらされながら耐えていた記憶ばかり。留学時代が一番気が楽だったかもしれません。「留学生」として受け入れられて、初めて「多少英語が拙いのはしょうがない」と思ってもらえたから。

そこで違う職業を選べばよかったのですが、教授には学芸員にならないと意味がない、というようなプレッシャーを受けていたし、母は私が「ずっと憧れていた職業」に就けるよう努力している姿を見てくれていた。ずっと、応援してくれていたんです。

周りの人たちからの期待とプレッシャー、今まで費やしてきた時間とお金、そのために諦めてきた大学生活、そういうものたちが頭の隅にあって、「無駄にする」のが嫌でした。

実際周りの人なんて他人の私に(良い意味で)期待していないこと、学芸員にならなくたって全てが無駄になるわけではないことに、追い詰められていた私は気づくことができませんでした。

だから、私は昔からこんな人を心の底から尊敬しています。

  • 今まで積み上げてきたものを手放すことができる人
  • やっぱり辞めよう!と決断できる人
  • 休むことを怠らない人

私にとっては、続けることよりも辞めることの方が難しかったです。

同じ気持ちの人、多いのではないでしょうか。

辛いと言えないあなたへ

学芸員になることができた今では、こんな気持ちになったこともあったなあ...と思えますが、あのとき「諦める」と言う決断が出来ていたら、それはすごいことだし、恥ずべきことではなかったと思います。

学芸員を目指す方に向けているブログだと言うのに、「諦めてもいいよ」というなんとも矛盾したことを書きました。

でも、学芸員を目指している人って真面目な人が多くて、こういうことで悩んでいるけど周りには言えない、みたいな人がいるんじゃないかなぁと思ってます。

私も人に言えなかったなぁなどと思ったりして。

他人が思う「あなたが好きなこと」じゃなくて、本当にあなたが好きなことをしてくださいね

▼ もう少し具体的な話が読みたい方へ 私自身が休学しながらも採用された経緯を、noteにまとめています。順風満帆じゃなくても、なんとかなることはある、という話です。

とりあえずでも、今は学芸員を目指してみるよ、という方は、以下の記事で色々まとめていますから、よければご覧くださいね。

少し気持ちを軽くしてくれた本

ここまで自分語りをしてしまったわけですが、そんなこんなで私は学生時代結構くよくよと「学芸員なりたくないかもな...」「私って美術好きなのかな」とか思っていたんです。

そんな時、私の心を軽くしてくれた本があります。

エルンスト・H・ゴンブリッチ著『美術の物語』です。

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病んでいた時も、執筆中も、学芸員になった今も、何度も読み返し、気づけばいつも机の上に置いてある本でした。

なんというか、読むと「美術が大好きな自分」に立ち戻らせてくれる本なんです。

ああ、美術って美しいんだ、と思える本。ずっとそばに置いておきたい本。

魅力についてはこちらの記事でも語っているので、ぜひ読んでみてください。

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